おひとりさま相続とおふたりさま相続、遺言書が絶対必要な理由。

おひとりさま相続とおふたりさま相続、遺言書が絶対必要な理由。

生涯結婚しない人の割合が増加しています。おひとりさま相続の行く末は、争族にはならないものの一抹の不安感がよぎります。たった一人で迎える人生の終末について、あれこれ考えると相続にかぎらず心配事が多くなり夜も寝られなくなります。

この記事では、おひとりさまとおふたりさまの相続で、考えておくべきことを整理しました。遺言書がなければ、おひとりさまの遺産は国庫に収納されます。しかしそれでは、遺産が何に使われるかわからないですから、虚しいのではないかと思います。

おひとりさまの遺産を役立てる方法を考えるきっかけになれば、せめておひとりさまの悩みの一つくらい解消できるのではないかと思います。

■遺贈寄付がすすまない日本的理由。

◆ 死ぬときはだれでもおひとりさま。

ところがおひとりさまだけでなく、結婚しても子どもがいない夫婦ではおふたりさまということになり、同じような問題が起こります。相方が先立てば、いずれはおひとりさまというわけです。

とくにおふたりさまでは、遺言書がなければ残された配偶者の生活に重大な影響があります。おふたりさま相続では、遺言書がとても大きな意味を持ちます。

■遺言書の効力がものを言う、絶対必要な7つのケース。

人間は誰でも、たとえ一人になっても、病気になっても、認知症になっても、体力が衰え車いすになってもとりあえず死ぬまでは生きていかなくてはなりません。そういう意味では、死ぬときは誰でもおひとりさまということかもしれません。

老後を心豊かに過ごすことは、皆が望むことではあります。しかしこればかりは未経験ゾーンですから、適切なアドバイスの言葉が見つかりません。

◆ 独身ならおひとりさま相続、子どもがいなければおふたりさま相続。

独身のおひとりさまは、体力があり元気なうちは勝手気ままに暮らすことができます。家族がいなければ、家庭問題などの煩わしいことはあまりないと思います。でも先のことを考え、おひとりさまでずっと生きていくことを思うと、気が滅入ることもあるのが普通の心理でしょう。

年を積み重ねるにつれて介護の心配、遺産の心配が重くなってきます。遺産は多くても少なくても、心配の種になります。おひとりさまにとれば、最後は一人という覚悟はできていると思いますが、心のどこかに弱気の虫が頭をもたげることもあります。

財産はそんなに多くなくても、それなりの財産は誰にでもあると思います。死後のことはもはや関係ないとはいうものの、遺産の処分については遺言書で指定することで、憂いのいくばくかは消える可能性があります。

親族がいれば、兄弟姉妹や甥姪に相続権があります。しかしそれもいなければ、おひとりさまの遺産は国庫に入ります。それがいやで世話になった第三者や団体に遺贈したり寄付したりするときは、遺言書で指定することができます。

■配偶者居住権のデメリット、不仲の子が障害に!

◆ おふたりさま相続の落とし穴は遺言書で解決。

子どもがなくておふたりさまになると、遺産相続では注意が必要です。配偶者がなくなったときに、相続人としての子どもがいないと親兄弟が相続人として登場するのです。

これは遺言書などでしっかり対応しておかないと、残されたおひとりさま配偶者が泣きを見る落とし穴です。

配偶者の急死などによる遺産相続上のもめ事も実際多いのです。

普通の子どもがいる場合の相続では祖父母兄弟姉妹に相続権はなく、当然遺留分はないのです。

ところがおふたりさまの相続の場合には妙な相続人が登場するのです。

子どもという相続人がいないばかりに、もともと相続に関係がない親族に相続権が発生します。

・遺言書がないと無情の法定相続。

おふたりさまの場合、連れ合いが亡くなったとき遺言書で指定していなければ無情にも法定相続となり、財産すべてを受け継ぐことができなくなるのです。

■子がないと被相続人の兄弟に相続権、遺言書がないと嫁の悲劇。

場合によれば遺産相続協議になり、住む家を手放して他の相続人に分割する必要も出てきます。

・子がなくて配偶者だけの時、親も相続人になり、配偶者が2/3、1/3が親の権利になります。

・子がなくて親がいない場合兄弟姉妹が登場します。配偶者が3/4、1/4が兄弟姉妹の取り分になります。

親族であろうとも、日ごろ懇意にしていようとも、お金の前には人が変わるということを胆に銘じておいてください。正規の遺言書さえあれば口出しできないのですから、くれぐれも抜けのないようにと申し上げておきます。

■特別寄与料は争族の火種、息子の嫁に報いる生命保険。

◆ おひとりさまとおふたりさまの生命保険。

おひとりさまに必要な保険は、死亡保険ではなく生前給付の医療保険ということになります。医療保険に入るべきと申し上げているわけではなく、経済的な余力があれば医療費の積立くらいのつもりで加入することです。

日本では公的な社会保険制度が充実しているので、高額な医療費負担で破産するようなことにはならないようになっています。医療保険では無理をして加入しても、長期的な損得から言えば得になる事はまずありません。がん保険なら、高度先進医療を受けるようなとき、多少は意味があるかもしれません。

おふたりさまの場合は、死亡保険金が助けになる事があります。配偶者の生活が維持できる程度の生命保険をかけておくのが安全です。もちろん保険金の受取人は配偶者に指定しておけば、遺言書で指定しなくても相続の枠から外れて受取人固有の財産となります。

・生命保険は早めに設計。

あまり老いてからは生命保険の被保険者としては適任ではないですし、保険料もお高くなります。できれば早いうちに老後を見据えた生命保険を考えておく必要があります。

おひとりさまで、もし自分の死後に残るかわいいペットがいれば、面倒を見てもらう信用できる人に遺言書で遺贈を指定しておいてください。

おひとりさまの場合、甥姪は兄弟姉妹がいれば相続人にはなれないので、甥姪に相続させたい場合は生前贈与か遺言書で指定してください。生命保険金の受取人に指定することも可能です。

しかしおひとりさまの終焉には、生命保険の出番がありません。さらには生命保険の受取人が指定できないばかりか、死亡保険金をかける意味がないのです。ただ病気をすることもありますから医療保険などの生存給付金で助かる事はありえます。

また生命保険を選ぶのであれば、いざとなれば解約返戻金というキャシュフローがる貯蓄性の高い、予定利率のよい生命保険なら意味があります。このところ金利ある世界が戻ってきています。保険会社各社、予定利率の引上げに進んでいますので検討する価値はあります。

■兄弟に遺留分がなくても納得できる相続の深い理由。

◆ 相続人がいない場合の遺産の行く末。

相続は相続人がいて争続になります。そもそも相続人がいなければもめ事も争いもありませんが、その遺産の行く末は国庫となり国の歳入決算に組み込まれます。

相続人不存在の要因は未婚率の上昇ということがあります。確かに結婚しなければ、子はいないでしょうから、相続人もいなくなる可能性があります。相続人がいないおひとりさまで、遺言書などで遺贈の指定がなければ、遺産は宙に浮いてしまいます。その結果、遺産を引き継ぐ相続人がいないわけですから、最終的には国庫に入ることになります。

相続人がなく国庫に入る遺産が多くなった要因は、少子高齢化、晩婚化さらには未婚率の上昇があります。厚生労働省の国立社会保障人口問題研究所によればお一人様の2015年度の未婚率は男性で23.37%女性で14.6%と高率になっています。

2012年度の国庫金は375億、その時の男性の未婚率か5人に一人、今や4人に一人となり国庫金は400億を越えたということです。なんとその額2015年で420億円、10年前の2.5倍にもなります。

相続においてはよほどのことがない限り、つながりのある相続人や関係者はいるものです。ただ相続放棄していたり、配偶者や子だけでなく親や兄弟姉妹もなくその子(甥や姪)もいない天涯孤独という場合がまれにあります。

・国庫と相続財産管理人。

そうなると本当のおひとりさまということになり、遺言書で遺産の遺贈寄付の指定しておかなければ、これはもう国庫に入るしか選択肢がなくなります。

その場合相続財産管理人が、裁判所により選定され遺産の処分を行います。相続財産管理人は相続人が本当にいないか、また特別縁故者がいないかを調べます。

その結果、相続人不在が確定し財産が残っていれば整理すべき債務等精算します。さらに残った遺産は、国庫に入ることになります。国庫に入れば、遺産は無駄になりはしませんが、だれも喜ばないし感謝もしません。

◆ おひとりさまの行く末を案じると、まとめ。

実際身の回りを見回すと、未婚の男女の中高年が結構います。親もなくなり一人暮らしになると老後の不安は本人だけでなく別の意味で兄弟、甥姪にかかってきます。しかし老いたとき、世話をしてくれる親族もなしとなると、おひとりさまの行く末は厳しいものがあるように思います。

これは時代の流れでもあり、一つの運命ではありますが、その流れで国庫金が増加するとは皮肉な巡り合わせというほかありません。

おひとりさまもおふたりさまも、これからの時代はどんどん増加します。自分がおひとりさまかおふたりさまかを自覚し、起こるべき相続問題に早めに対処しておくことが何より肝要です。

老老介護と老老相続、複雑化する高齢化時代の生き方。

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