遺言書の効力が相続争いを防ぐ理由と検認の意味。
生命保険をあつかっていると、相続にかかわることが出てきます。保険好きな国民性ですから、資産家も貧乏人も生命保険に加入しています。ところが遺言書を書くという人はあまり見かけません。
遺言書は相続税がかかる資産家が、相続争いを防ぐために書くものと言う風潮があるようです。
遺言書と遺書の区別ができていないというのが、大方の実態ではないかと思っています。よって遺言書の効力が、一般に正しく理解されているとは言い難い状況です。
財産が多くても少なくても、遺言書を書いておけば無用な争族を防ぐことができます。遺言書を資産家や専門家だけのものと考えず、より多くの高齢者の方に活用いただければ世の中の仲たがいもずいぶんと減るのではないかと思います。
自筆証書遺言を有効にするためには、家庭裁判所による検認という手続きが必要です。遺言書の効力と検認の関係について注意事項を整理しました。
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◆ 自筆証書遺言書は家庭裁判所の検認が必要な法律文書。
遺書は自ら死を選択する人や、死を前にした人が家族への感謝の気持ちをしたためる最後のお手紙です。涙することはあっても遺産に対する効力はありません。
ところが遺言書は民法に定められた効力があり、れっきとした法律文書です。
うるさい要件がいろいろありますが、これをクリアし家庭裁判所の検認をうければ、不動産登記や被相続人の財産の名義変更のときの証明書になります。
あとに残された家族のことを憂うなら「遺書を書くより法的効力がある遺言書!」と申し上げたいところです。
◆ 勝手に遺言書を開けると法律違反。
遺書は誰がいつ開けても何の問題もありませんが、遺言書はそういうわけにはいかない法的文書なのです。
相続に関係する相続人全員が納得する公正な処理が必要です。
誰か一人が先に内容を知ると不利な遺言の場合、改ざんや破棄のリスクがあります。
よって遺言書は家庭裁判所に検認申請をし、相続人全員に通知したうえ相続人立ち合いで家庭裁判所にて開封し中身を確認することとなっています。
自筆証書遺言の場合、保存場所によっては誰かが先に見つけます。開けたくなる誘惑がないとは言えませんが、法律違反になるとも知らずに開けることもあるでしょう。
検認前に開封したからと言って遺言が無効になるわけではないので、そのままの状態で家庭裁判所に検認を請求することです。検認とは遺言の形式要件を確認し有効であることを証明するものであり、内容にはかかわりません。
たとえ開封してしまったとしても、遺言書としての効力がなくなるわけではありません。家庭裁判所に検認を申請しましょう。
遺言書は「開封厳禁!」間違って開封しても、検認へと申し上げておきます。
■遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。
◆ えっ!過料を払って遺言書を確認する。
「すみません!間違えて開けてしまいました。」とかいって過料を払っておけばよいのです。そうすれば他の相続人に先んじて遺言の内容を確認できます。
遺言書の開封は法律違反ですが、犯罪ではありませんから逮捕されるようなことにはなりません。たとえは悪いですがスピード違反で反則金を払うようなものです。
それで遺言の内容に問題なければ、家庭裁判所の検認をうければよいのです。
誤解なきように申し上げておきますが、法律違反になりますからむやみに遺言書の検認前の開封をおすすめしているわけではありません。もめそうな遺言書では、改ざんを主張されると裁判になります。
自筆証書遺言にはそう言うリスクがあるということです。
開封は「ごめんなさい」と過料(罰金)で済みますが、破棄すると犯罪です。遺言を破棄した者は相続欠格者となり一切の相続の権利を失うばかりか、私文書毀棄罪で5年以下の懲役となります。くれぐれもお気を付けください。
◆ 道はゆずり合えても財産はゆずり合えないのです。
遺言書を推奨する理由のひとつには相続争いの多さにあります。お金がなくてもわずかな財産を巡り醜い骨肉の争いが始まります。せめて遺言書で申し送りができていれば争族はいくばくかでも緩和されると思うのです。
田舎では長子相続が普通でした。今もそういう考えは一部に残っています。娘は嫁に出したとき花嫁道具一式で相続放棄、次男は近所に新屋を建ててもらい、それで相続放棄、長男が親の面倒を見るかわりに相続財産をすべて引き継ぎます。したがって遺言書も特に必要ありませんでした。
時代が変わると法律も変わり、人の権利意識も変わります。仲の良い親族といえども遺産分割の場では黙っていられなくなります。遺言書あれば親の意志がわかりますから、不満があっても抑えが効きます。
ゆえに田舎でも都会でも遺言書、金持ちでも貧乏でも遺言書と言えそうです。悲しいかな人は、道はゆずり合えても財産はゆずり合えないのです。
・二次相続の遺言書が大事です。
老婆心までに申し上げますと、二次相続での遺言書はほとんど聞きません。一次相続で終わったと思っていたら、二次相続で相続争いが勃発します。第二次相続争いです。一次相続のときは、母親が存命ですから争いも遠慮があったと思います。しかし二次相続では、すべての歯止めが取れてしまいます。相続財産は少なくなりますが、相続争いは一層熾烈になるという構図があります。
二次相続こそ法的効力がものを言う遺言書を作成いただきたいと申し上げておきます。
◆ 遺言書は、効力がある法律文書、まとめ。
資産家や事業承継にからむ場合は、遺言書は必須になります。また家族仲がよろしくない場合や、子によって生活に困っているような場合、事業に失敗しているような子がいる場合は注意です。とくに親の意思を法的に担保できる遺言書が必要でしょう。
しかし仲のよい家庭で問題があまりない場合は、ガチガチの遺言書でなくても親の意志を簡単な書面で残しておくことで、争いなくおさまることが多いと思います。
親の意志が残っていないと、ギクシャクした遺産分割協議にならざるを得ないのです。そんなつもりがないのに相続争いになるのは、親の意志を書き残さないからです。
できれば生前から子らには遺産分割の割り振りを伝えておくと納得性が高くなります。しかしそれより遺言書で個人の意思を残すことは大事だと思います。
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