遺言書、書き損じればただの遺書、どうしても遺言書が書き始められない経営者へ。
遺言書と遺書の違いについては詳しいサイトはいくらでもあります。ここでは社長たる経営者が遺言書と遺書の区別ができているようでできていない実態について書いています。
経営者にとって遺言の重要性は家族だけでなく、会社にかかわるステークホルダーとその家族にまで影響を及ぼします。それゆえ踏み込んで理解し有効な遺言を元気なうちに書いていただきたいと申し上げております。
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◆ 遺言書が書けない経営者の本音
何回進言しても遺言書にかかれない経営者はいるものです。確かに経営をしていると不確定要素があり決められないことも多いのです。単に財産を分割するというだけの役割ではないのが経営者の遺言です。
特に経営者は仕事柄、最悪のケースをあれこれ考え病みます。
後継者万が一の経営権の行方まで深慮します。息子を副社長にしたものの、どうしても決済印を手放す決心はつきません。息子の嫁もその家族も心から信用できないのです。かわいいのは孫ばかりです。
そこまで考えながら遺書と遺言書の区別がついていないのです。
口には出さないが譲りたくない思い、寄る年波に選択肢がどんどん限られてくることも自覚しています。浮かんでくるのは昨日見た孫の顔ばかりになります。
◆ 遺言書を書くには気力、体力、知力が必要。
遺言書を書くには資産のレベルにもよりますが、所有している不動産や現預金、証券関係から生命保険などの金融商品、所有している美術品まで整理できなくては分けることはできません。
特に生命保険などは仕組みが複雑ですからある程度頭が明晰なうちでないと理解できないとお考え下さい。
年とともにまだまだと思っていても体力も気力も衰えを自覚してきます。鏡の中の老いた自分の姿が信じられないほど惨めに見えます。遺言書をそろそろ書かなくてはと言い続け、ギリギリになってしまいます。
遺言書は間際に言い残すものではないのです。
◆ 遺言書と遺書を区別できない経営者へ。
遺書は後に残された家族や関係者に対する最後の思いを伝える単なるお手紙です。いわゆるLetterでしかないのです。
ところが遺言書は有効に成立すれば民法に定められたら法的文書として強制力をもつのです。相続人に対し権利や義務を指定するものが遺言書です。
遺言書にはよく付言に家族への感謝を書き加えたりします。法的効力のある文書としての遺言書に遺書のような一文を付すとどうも区別がつきにくくなります。
しかし遺言書というからには厳格な要件があります。それを守らない、あるいは守れていない遺言は法的拘束力がない遺書と同じ位置づけになってしまいます。
残された遺族が争うことがないよう、また自分が守り育ててきた会社がこれまで通り成長してくれることを願うのが経営者です。そのための最善を追求するがゆえに迷いも多いのです。
◆ 遺言書と遺書の機能的な区別が大事。
事業承継の最後の締めくくりとして遺言書はとても大事なものになります。
経営者にとって後継者が自分の築いてきた会社を守り育ててくれることを願うばかりです。そのために後継者となるべき相続人に資産を集中するのは当然のことなのですが、他の相続人にそれを納得させ法的な強制力をもって分割指定できるものが遺言書です。
一文字「言」が加わるだけではありますが、遺書と遺言書は法的文書かどうかという点で機能的に全く異なります。
辛口で申し上げましたが、どうか気力のあるうちに遺言書を一度お書きください。
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