遺言書で怖い認知症、進まぬ財産整理、老いは意欲を減衰させる。

遺言書で怖い認知症、進まぬ財産整理、老いは意欲を減衰させる。

遺言書については何度も書いてきました。遺言書が書けない被相続人が多いことも実感として感じています。自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる便利な制度もスタートしました。

パソコンで作成可能になった財産目録には、保険契約や不動産、銀行口座、株式などの債権、負債などを特定できるように整理する必要があります。なぜ財産整理が進まないのか、第一の原因は、相続人に財産の実態を知られたくないので、自分一人でやろうとするところにあります。そうこうしているうちに目が衰えピントが合わなくなります。パソコンに向かう気力がなえてきます。そして遺言書で最も怖いことが、認知症の発症です。

■遺言書の効力がものを言う、絶対必要な7つのケース。

◆ 認知症リスクの高まり。

いつまでも書くべき遺言書に取り掛かれないでいると、認知症の病魔が忍び寄ります。認知症になる確率は老化に伴い急激に高まっていきます。現在の統計では、65歳以上の方の約16%が認知症であるとされています。ところが、この数値が80歳代の後半で男性場合35%、女性では44%にもなります。90代になれば、ほぼ半数が認知症ということになります。

認知症には段階があり、時間をかけて進行してきます。最初は単純な物忘れから、約束事はほぼ覚えていられなくなります。初期のころは認知障害などと言って認知症と区別しますが、このころから車の運転免許証の返還を考えないといけなくなります。

症状が進むと、遺言書どころではなくなります。外部の人と話すときは、認知症を感じさせないのですが、お昼ご飯を食べたことも思い出せなくなりますから、家族は目が離せなくなります。

この状態で、無理に遺言書を書いたとしても、それが本人の意思によるものかどうかを争うようなことが起こります。こうなると有効な遺言書という点では、手遅れに近くなります。

◆ それでも遺言書にかかれない老経営者。

お若い人には理解しがたいことかもしれませんが、老人が遺言書を完成させることは難事業です。とくに事業承継にからむ遺言書は、単に財産分与の指定だけではない経営上の複雑な問題がからんできます。

遺言書を完成させるためには、それなりの知識と情報収集力が求められますから、手間も気力も必要です。財産が多く、種類が多岐にわたるほど独力でまとめ上げることはハードルが高くなります。老経営者が遺言書にとりかかれない理由は、財産分与を決められないだけでなく、財産の情報整理をするための気力が衰え始めていることもありそうです。たとえ認知症にならなくても、老いは意欲を減衰させるものなのです。

■遺言書のメリット、とことん書けない本当の理由を行動分析で。

◆ 遺言書は気力のある内でないと判断を誤る。

過去に何度も書いてきましたが、老経営者は遺言書を遺書と混同しているところがあります。遺書は死ぬ間際に家族への思いを書くもの、遺言書は、気力と判断力があるうちに、相続人が納得し経営が承継されるよう、財産の分け方を決める法律文書です。それだけに遺言書は、気力も知力も充実しているうちにしっかり考え書いておく必要があるのです。

厄介なことは、歳を取り健康に自信がなくなると、考え方が徐々に変わってくるのです。最初は経営に重きをおく考えが、次第に孫可愛やが優位になります。そうなると判断を誤ることにもつながりかねません。オーナー経営者である以上、会社の存続と従業員のことを第一に考えなくてはなりません。認知症の診断を受ける前に、事業承継を考えた遺言書を作成するかどうかで、事業の存続にかかわることもあるのですから。

■遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。

◆ 取り掛かり棚上げが3回あれば要注意。

何度も遺言書に取り掛かって、完結できずに棚上げになっている方もいらっしゃると思います。その理由はよくわかります。

ご自分の健康に対する自信、そして誰に継がせるか腹が決まらない、相続税の節税対策で不動産が流動的で決まらないなど、さまざまな事情はあると思います。

何度税理士に相談しても一向形にならないこともあります。情報を出し惜しみしたり、正確な情報が手元になかったりと言うこともあるでしょう。税理士は財産情報の整理や相続税の試算はしてくれますが、腹をくくって財産分与を設計するのは自分しかいないのです。

税理士が必要なものは、相続税計算の元となる資料ですが、それは遺言書に添付する資料としては、不動産を特定する地番などで不完全なままになりがちです。遺言書では評価額は不要ですが、財産を特定する個別の詳細な情報が必要となります。このアンバランスが遺言書に添付する財産目録の障害になることがあります。税理士にすれば、相続税の試算が目的ですから、遺言書が書けるかどうかまで面倒はみてくれないのです。

その結果、遺言書に取り掛かったものの、完結できず先送り、棚上げになります。これを3回ほども繰り返して、そのうち物忘れがひどくなり遺言書に黄色信号です。そんなバカなとお思いでしょうが、よくある話なのです。遺言書が書けない本当の理由は、そんなところにあります。

■予備的遺言の効果、相続人死亡の場合遺言が無効に。

◆ そのうちコロナか認知症、後継者の辛苦。

人間元気なうちが花です。しかしいつまでも元気で居られるとも限りません。ましてやこんな時代です。毎年人間ドックで健康管理をしていてもいつ何時(なんどき)、新型コロナでレントゲン肺真っ白、重症者になるかもしれないのです。

三大疾病にかかって生還しても気力は半減することでしょう。さらに怖いのは認知症です。体が元気でも、もはやどうにもなりません。症状が進めば、遺言書などとんでもないことになります。元気なうちに遺言書で指定しておかないと、法定相続になり後継者は、辛苦することになるでしょう。

■遺言書を破棄したら罪になるかを事例で説明。

◆ 経営者なら認知症と診断される前に遺言書。

遺言書が書けない認知症は、自分で自覚してコントロールできなくなる厄介な病気です。経営者ならボケる前に、会社のことを考えた遺言書を書いておくべきです。

静かに忍び寄る認知症、気がついたら(ご本人は気がつきませんが)知力も気力もなくなり、遺言書などもうどうでもよくなります。そいうことにならないよう思い立ったが吉日、とにかく一度、経営者なら認知症と診断される前に遺言書を完結させることです。

◆ 認知症で自覚がなくなる遺言書、まとめ。

遺言書はとにかく一度仕上げることが大事です。しっくりいかない部分や、見直したいこともあるでしょう。

それはお盆とかお正月に、折に触れて毎年見直せばよいのです。

遺言書が書けたら法務局に保管を依頼することです。安いコストで遺言書の正当性が保証されます。せっかく書いた遺言書を会社の金庫にしまったりせずに、堂々と法務局に保管を依頼しましょう。

老いが進むと、遺言書を書くということは骨が折れることなのです。遺言書があれば、嫁や子たちは安心すると思いながら、実はどうにも書く気が起こらないのです。

遺言書が書けない老経営者を非難しているわけではなく、事情はよく理解できるので認知症リスクに対して警鐘を発しているとお考え下さい。まだまだ若いと思っていても、確実に言えることは、認知症に限らず生き物としての人間の摂理として、老いは意欲を減衰させるということです。

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