遺言書が書けない本当の理由。
やる気が出ない本当の理由からのパクリですが、物事に取り組むにはそれから得られる見返りとしてのメリットがなくては行動が生起しません。行動の原理から言うと遺言書に取りかかるという行為は被相続人にとってそこから得られるメリットが直接的でなく、茫漠としているのです。
1)遺言書にメリットを見いだせない経営者。
遺言書がなかなか書き始められない経営者がいらっしゃいます。ハナから書く気のない方もいらっしゃいます。
個人なら身内のもめ事で他人様に迷惑を及ぼすこともありませんが、こと中小企業のオーナー経営者ともなると事業承継・相続設計がうまくいかないとステークホルダーでも特に従業員とその家族に多大な迷惑が及びます。
それでも遺言書が書けないのは、自分が築いた財産を相続人に渡したくないからでしょうか、遺言書に効力がないと考えているのでしょうか、いいえ違います。
遺言書を書くことにより得られるメリットより、遺言を書くことによるデメリットが大きいと感じているからに他なりません。自覚はしていませんがね。
2)遺言書を書くことによるメリットは60秒以内に生起しない。
行動分析ではその行動のあと60秒以内にメリットを受ける行動は強化されるとしています。動物である人間の行動の原理の本質です。
例えばお酒を飲んだ時は60秒以内に美味しいと感じるメリットが発生し行動は強化されますが、翌日の二日酔いは時間が経過しているので、お酒を飲むという行為が二日酔いというデメリットにより弱化されません。その結果、飲酒は繰り返されるというわけです。
遺言書を書くことによる被相続人への直接のメリットはあるとすれば会社を守り家族仲良くということでしょうが、自分の死後ですから遺言書の結果に関知することが元々できないという宿命的な側面があります。
3)遺言書を書くことのデメリットは。
遺言書を書くことは自分の死亡を前提にしています。ある程度弱ってきて諦めがつくまでは、あまり考えたくない恐ろしいことでもあります。
また自分が刻苦してひそかに貯めてきた財産を整理して披露しなくてはならないということも心理的な抵抗につながります。知られたくないことも一つや二つあるやもしれません。
他にも相続人たる子供の格付けをしなくてはなりません。会社を継いでくれる子、嫁いだ娘、孫の数、仲のよくない次男などに対して相続財産を分けるという行為で格付けしなくてはなりません。
どの子もかわいいが、やはり微妙な差があるのが親心、また子らの配偶者の顔やら孫の顔が判断を曇らせます。これらの悩み苦しみは遺言書を書くことのデメリットと言えるでしょう。
4)遺言者を書くメリットを強化する。
遺言書を書くことにメリットはないのでしょうか。いいえそうではありません。もしメリットがないのであれば、行動の原理からすれば世の中に遺言書という仕組みが機能するはずがありません。
遺言書に取りかかるには時期があるということです。遺言書を書きあげて腹を決めることで、ほっとしてメリットを得ることができるまで、その行動は生起しません。
腹を決める時期はやはり体力と健康に相談することになりましょうか。自分自身の体に自信があるうちはデメリットが勝っていますが、年とともに弱り始めると精神的にも弱気が出てきます。相続のことも会社のことも大きな心配事になります。
遺言書を書くことで一件落着のような安ど感が得られれば、それはメリットとなりえると思います。
5)まとめ
行動分析的理屈はそうですが、万が一ということもあります。人間年を取るにつれて万が一のリスクが高まります。だから生命保険料も高くなるのです。
経営者にかかわらず、財産のあるなしにかかわらず、ある程度のお年になれば財産を整理して目録を作成してください。財産目録ができれば遺言書に取りかかりやすくなります。
生命保険の受取人変更とともに遺言書は頭の明晰なうちに仕上げることが、やがてこの世を去るものの務めと言えるでしょう。
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