消滅時効にかかる解約返戻金の請求権の真実に迫ると失効のリスク。
解約返戻率のピーク時が限られている逓増定期保険などは、解約返戻率が高い時期に、保険料の支払いをストップし失効させることがあります。
よくあるケースですが、社長の退職慰労金に充てるつもりで準備していても、引退時期が諸般の事情でずれてしまうような場合です。
◆ 消滅時効にかかる解約返戻金の請求権。
保険料の支払いをストップし、保険契約を失効させることで解約返戻率の高いまま解約返戻金の受取時期を先延ばしできます。しかしそれにも限度があるということです。
生命保険契約を失効させるテクニックは下記にご案内しました。
約款には、契約者に取りうっとうしいことが書いてあります。
保険法第95条によると保険給付金や保険金、解約返戻金、前払保険料を返還する権利は、権利発生時の翌日から3年間請求をしないと時効により消滅します。
消滅時効とは、一定期間行使されない権利を消滅させる制度です。消滅時効により権利が消滅することを時効消滅というそうです。
法律上は、解約返戻金の請求権の消滅時効は3年ですから、それまでに請求の手続きをしないと時効となり、請求権は消滅しますということを言っています。請求権が消滅すれば、約款の建前上は、本来契約者に戻るはずの解約返戻金を、保険会社が取込むことになります。
保険の性格上、保険契約の復活可能な期限が3年ということがあります。復活できない保険を、解約しないで3年以上持っていることは、経済的合理性に反するというわけです。一般の債権でも消滅時効は10年なのに薄情な話です。
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◆ 解約返戻金の請求権に係る消滅時効の実際。
実際のケースでは、契約者(=被保険者)死亡で保険契約の存在を知らずに、数年後保険証券が見つかったりすることもあります。
満期金などは契約者が受取の手続きをしないと、保険会社は預り金として運用する仕組みまであります。解約返戻金の未支払契約に対する、自動返金制度がある保険会社もあります。これはこれで困るのですが・・・
厳密には保険会社が時効の援用(時効の運用を契約者に伝える)を意思表示することで消滅時効は成立しますが、実態はまずそんなことはしません。保険会社は粛々と支払いたいのです。
解約返戻金も保険金も契約者もしくは受取人のものです。それを消滅時効とは言え、勝手な理屈で取り込むことには保険会社もためらいがあります。
保険金殺人とか自死とか告知義務違反とか、悪質でない限り3年が過ぎていても保険会社は解約返戻金の支払いに応じるものです。保険会社としての社会的信用もありますから、あまり杓子定規にも出来ないのが実際です。
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◆ 消滅時効にかかる解約返戻金の請求権、注意事項、まとめ。
だからと言って失効させて3年経過しているのに、まだ引退しないからと保険の解約を先送りすることをおすすめしているわけではありません。
さっさと引退して解約返戻金を受けとり、退職慰労金にすべきだと申し上げているのです。
法人保険を管理する立場で申し上げれば、設備投資や退職金支給などの出口対策ができていない場合、失効させることはあるのですが、保険管理の難しい面が出てきますので、注意が必要です。
また、口座振替では保険料をストップできませんから、支払方法を振込に変更して支払いを止めておくような手間がかかります。
失効させるつもりで保険料の支払いをストップしているにもかかわらず、自動振替貸付で保険料が解約返戻金から充当されているよいうなことも起こります。
消滅時効にかかる解約返戻金の請求権という点では、今のところとくに重大な問題は起こらないと思います。
むしろ、失効させることの方がハードルが高いのが実情です。失効は契約者の当然の権利のように思っていると、失効できない生命保険があったり、失効すると消滅時効も関係なくいきなり解約返戻金を振り込んできたりする国内生保があります。
この種の処理は、保険に関するそこそこ高度な知識が必要です。尚且つ、保険営業の言うことを鵜呑みにしない、窓口の代理店ではなく、保険会社のサポートに直接確認して裏を取っておく用心深さが必要です。
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