医療費控除で医療費のお知らせが役に立たない理由。
医療費控除では医療費の集計をしなくては金額が確定せず申告ができません。医療費の領収書をこまめに保存しておく几帳面な方は、領収書を整理して医療を受けた人ごとに、また医療機関ごとに集計できます。
健康保険組合などから毎年年明けに医療費通知書(医療費のお知らせ)が送られてきます。
会社員なら協会けんぽから会社に一括して送られてきますから会社から受け取っていると思います。
医療費通知書があれば領収書はいらないように考えがちですが、毎年、医療費控除で還付金を受取っている立場で言えば、医療費の通知書が役に立つことはあまりありません。
医療費通知書が有効に使えるように案内されているサイトが多いですが、領収書と突き合わせて抜けがないか確認する程度の役にしかたちません。それもタイミングがずれるだけでなく、医療費としては保険適用に限定されるので役に立つという感じはありません。まだまだ課題の多い医療費の通知書ついて問題点と活用法をまとめました。
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◆ 健康保険の「医療費のお知らせ」の実情はバラバラ。
誰しも医者にかかるときは健康保険のお世話になります。サラリーマンなどの多くの方が協会けんぽ(全国健康保険協会)の被保険者です。
また自営業やフリーランスの方は市町村などが運営する国保(国民健康保険)に加入しています。それ以外に企業が運営する各健康保険組合、公務員などが加入する共済組合などがあります。
協会けんぽ(全国健康保険協会)では「医療費のお知らせ」を1月13日より順次発送します、となっています。一年分まとめて送付されるのかと思いきや、そうではありません。協会けんぽのサイトには下記の記述があります。
※「医療費のお知らせ」には、令和4年1月分から9月分の医療費等が記載されています。記載されていない令和4年10月分から12月分の医療費等については、医療機関等からの領収書等に基づき、ご自身で医療費控除の明細書を作成する必要があります。
結局医療費の明細書は最後の3か月分が記載されないので、自分で医療費の領収書を集めて医療費控除の明細書を作成してくださいと言うことです。これで簡略化できるとは思えませんが、医療費の確認のためにはある程度有効かもしれません。
さらに小さな字で国税庁からの補足事項として、下記の記載があります。
~国税庁からのお知らせ~
〇国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーから、スマホやパソコンで医療費控除の確定申告ができます。 以下のものがあれば、マイナポータルと連携して医療費の情報を取得でき、「医療費控除の明細書」に自動入力することができます。
・マイナンバーカード
・マイナンバーカード読取対応のスマートフォン(又はICカードリーダライタ)
※マイナポータル連携の詳細については、国税庁ホームページの「マイナポータル連携特設ページ」をご覧ください。
※マイナポータル連携で医療費の情報を取得すれば、1年間分の情報が連携対象となります。(令和4年分以降)
※医療費控除の適用を受ける場合、支払った医療費から保険金等で補填される金額を差し引いて控除額を計算する必要がありますので、ご注意ください。
マイナポータル連携では、令和4年分から一年分の医療費データが連携対象となるということですが、これはやはりリアルタイムということは期待できないので、数か月遅れくらいになると思われます。
地方自治体が運営する国民健康保険では「国民健康保険医療費のお知らせ」が標準的なパターンでは2カ月単位、3カ月遅れで届きます。しかし自治体の対応によりバラバラですのでそれぞれに確認する必要があります。
ある自治体の国民健康保険のサイトには下記のような記述があります。たぶんどこも同じような対応だと思われます。
【大田区の例】
- 医療費控除の対象期間
通知書には、令和3年12月から令和4年11月までの期間の掲載がありますが、令和4年分の申告の対象となるのは、令和4年1月から令和4年12月までの間です。そのため、令和4年12月診療分については、お手持ちの領収書に基づいて、医療費控除の明細書を作成してください。
【大阪市の例】
・医療費のお知らせは、診療を受けた月から3~4か月後(審査機関での審査等を行った後)でないと送付できませんので、11月と12月の診療分については、3月上旬以降の送付となります。確定申告に間に合わない場合は、「医療費控除の明細書」は、10月分までは医療費のお知らせに基づき記載し、11月と12月の分は医療費にかかる領収書に基づき記載のうえ、確定申告書に添付することにより、医療費控除の適用を受けることができます(「医療費控除の明細書」記載にかかる領収書は5年間保存する必要があります)。
これを読むと、各自治体ともにまったくバラバラな対応となっています。医療費控除の確定申告をするなら、医療費の明細書を待たずに医療費などの領収書をまとめて集計して、医療費控除の明細書を作成する方がよほど簡単で早くできることは間違いありません。
◆「 医療費のお知らせ」に記載されない医療費に注意。
医療費の通知書が役に立たない理由の一つには、健康保険を使わない医療費が記載されないことがあります。自由診療とか自費診療などと言われますが、健康保険が使えない医療費もそれが治療目的であれば医療費控除の対象になります。
たとえば、あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師・柔道整復師などの国家資格を持つ人の施術であれば保険適用外でも医療費控除の対象になります。
他にもインプラントや補聴器、メガネなどでも手順を踏む手間はありますが、医療費控除の対象になります。この辺が来るとご承知のように医療費の金額もデカくなり、還付金も大きくなります。また通院のための交通費でタクシー代もOKです。公共交通機関を利用した場合は領収書がありませんが、メモで通用します。
他にもOTC医薬品もレシートを残しておけば医療費控除の対象になりますから、こまめにレシート(感熱紙だと時間がたてば消えるので、下にメモ書き)を残しておいてください。
◆ 「医療費のお知らせ」が役に立たない理由、まとめ。
医療費の通知書は、健康保険組合などにより色々なタイトルで、また様々なパターンで送付されてきます。多くの場合において医療費控除の明細書を別に作らないと正しい医療費が集計できません。
最初からエクセルにまとめて集計すれば明快なのですが、無理に医療費の通知書を使おうとするとかえって手間取ります。
医療費の通知書が役に立つことがあるとすれば、領収書が散逸している場合や紛失したような場合には代わりの証明になります。また医療費の通知書をきちんと残しておけばかさばる領収書を5年も保存する必要はなくなります。
もちろん医療費の通知書に記載のない自由診療の医療費や通院のタクシー代、OTC医薬品等は領収書の5年保管が必要です。また協会けんぽでは、令和4年分からマイナポータルを通じれば一年分の医療費データを連携できるようになったようです。これで申告するにはマイナポータルとe-Tax連携というかなり難儀なハードルがありますが、まずは一歩前進しています。
各自治体が管理する国民健康保険では対応がバラバラです。「国民健康保険医療費のお知らせ」では、2か月分を3カ月遅れで送付するというところが多いようですが、これはこれで使い勝手はあります。確定申告に期間にこだわらない医療費控除の還付申告ですから、医療費の明細が揃ってから申告すればよいわけです。
ただやはりこの時期でないと腰が上がりにくいということがありますし、何事もせっかちなhokenfpにはまったく不向きです。
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