贈与税の基礎控除110万円がなくなる日の混乱。

贈与税の基礎控除110万円がなくなる日の混乱。

2021年の税制改正大綱では、資産家だけでなく庶民がドキッとする検討がなされました。

それは贈与税の非課税枠である基礎控除110万円を廃止するという内容です。結局、今回の税制改正には具体的に盛り込まれませんでしたが、今後本格的な検討を進めると明記されました。

これは保険業界のみならず、贈与税の基礎控除枠を活用した節税スキームを得意とする業界に重大な影響が懸念されます。

生前贈与を非課税に|何から始めてよいかわからない方へ。

◆ 庶民には理解できない贈与税。

国税庁のサイトには下記の様に贈与税が定義されています。人から人へキャッシュや財産価値のあるものをあげれば贈与となり、年間110万円以上の部分に贈与税という日常的には意識することがない税金がかかります。

【国税庁】

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。 したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。

贈与税の基礎控除額は、受贈者(もらう人)一人あたり60万円という時代もありました。2001年1月1日以後の贈与から、110万円に引き上げられ活用の幅が広がりました。

そもそも日常的に扶養の範囲で渡すお金は贈与にはなりません。扶養の範囲を逸脱した車を買うお金やローンの頭金などの基礎控除110万円を越える部分は贈与とみなされます。しかし相続税がかからない庶民層では贈与税を意識することもないと思いますし、贈与税の申告をする必要もありません。

暦年贈与のおいしい使い方3項目を伝授。

◆ 税制調査会の考え方と言い分。

相続税対策の基本は生前贈与です。その基本となる贈与税の非課税枠は「資産移転の時期の選択に中立的でない。」などと政府税制調査会の見解が述べられています。

これまでの政府の考え方は生前贈与を促進して、贈与税の基礎控除を60万円から110万円に増額したり、相続時精算課税制度を導入したり、あるいは教育資金の一括贈与を時限立法として成立させたりと資産家に有利な制度を景気刺激策の名目で促進してきました。しかし今回の贈与税の非課税枠の見直し検討の理由は、これまでとは違った見解で構成されています。

さらに政府税制調査会は「相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直し、格差の固定化を防止しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制を構築する方向で、検討を進める必要がある。」としています。資産移転策による景気刺激の名目で資産家擁護の政策を見限って逆噴射したような内容です。

確かに、贈与税の基礎控除が廃止されるようなことになれば、非課税枠を使った生前贈与がやりにくくなり、資金の移転が進まない中、相続税で決着を見ることになります。そうなると世界一厳しい相続税がものを言いますから、資産家にはダメージが大きくなると考えられます。

暦年贈与のデメリットを克服する手法。

◆ 贈与税の基礎控除がなくなれば暦年贈与は終わり。

贈与税の非課税枠を利用した暦年贈与は、毎年、保険料として親から非課税枠の範囲で贈与を受け保険料支払いにあてる仕組みです。

契約者:相続人(子)

被保険者:被相続人(親

受取人:相続人(子)

親から子へ110万円贈与、親が被保険者となり体を提供します。子は契約者(保険契約の所有者)として贈与されたお金を保険料にあてます。親が亡くなると子は、死亡保険金を受け取りますが、支払った保険料を差し引いた儲けの部分は、相続税でも贈与税でもなく、半分に所得税が課税される最も有利な一時所得として受け取ることができます。

この非課税枠を活用した暦年贈与による保険設計スキームが成り立たなくなります。この場合は過去の契約に遡及しないとはなりませんから暦年贈与をしていれば、保険料の贈与分は贈与税の課税対象となることになります。

相続税がかからないのに贈与税の申告が必要になるという悲惨なことになりますから、解約を検討される契約者が増加すると考えられます。この暦年贈与の仕組みは保険業界だけではありませんから影響範囲は甚大です。

さて、政府税制調査会はどこまで本気なのでしょうか。コロナ禍で不足する税収を無理からでも取りに来る強硬姿勢が続いていますから、今後警戒が必要です。

贈与税の時効を気に病む人へこれで安心、秘策公開!

◆ 贈与税の基礎控除がなくなる日、まとめ。

贈与税と相続税はセットで考えるようになっています。贈与税で押さえておいて、漏れ残った資産を相続税で受ける仕組みです。贈与税の強化策で生前贈与を締め付ければ、資産は移転しにくくなり、相続税で一気に清算することになります。

相続税の考え方は所得税の補完という役割があります。所得税で取り漏らした資産を相続税で清算していただくという二重網方式です。うまく立ち回って所得税を少なくして資産を増やしても、その先には超過累進課税の相続税の網が張ってあるというわけです。

相続税の役割は、富の集中抑制と言われます。相続税があるから社会の公平性が保たれるというわけです。半面では、資産を築いても3代でなくなり貧乏に落ちると言われるように相続税の厳しさは群を抜いています。

もし贈与税の非課税枠がなくなるようなことになれば、生前贈与の基本が崩れ資産の移転が進まなくなるばかりか、中小企業に事業承継にも影響が及ぶと思います。

我々国民が口出ししても何かが変わるわけではないのですが、それでも贈与税の基礎控除の廃止には慎重になるべきかと思います。一つの方策として、基礎控除110万を定めた特別措置法を廃止して本則に戻せば、基礎控除枠は20年前の60万に戻ることになりますが、それでも混乱は避けられないところでしょう。こういう社会制度をいじると、各業界に弊害が発生するということを十分認識して政策決定願いたいものです。

教育資金の一括贈与の最大のデメリットと改正点をわかりやすく。

教育資金の一括贈与の最大のデメリットと改正点をわかりやすく。


教育資金の一括贈与が非課税になる制度が、令和8年(2026年)3月31日まで再延長されることになりました。しかし一部これまでとは異なるルールが令和3年(2021年)から追加され、厳格化されたためデメリットが目立つようになりました。

相続税の節税に知恵を絞っている資産家には、一見魅力的に見えます。しかしよく見ると子や孫に大金を贈与するわけです。家族内で生活のリズムが狂いだすデメリットもかなりありそうです。

デメリットを中心に、教育資金の一括贈与の是非についてまとめました。

■贈与税改正、知らないと損する逃げ水贈与4つのポイント。

◆ 孫への生前贈与の最大のデメリットは、親の生活の緩みと綻び。

むやみに生前贈与することは、決して子や孫のためにはなりません。生前贈与も相続財産も棚ぼたの不労所得です。大枚のお金があれば、汗水たらして家族のために働く気がなくなるのは自然の成り行きというものです。

教育資金の一括贈与を孫に行うと、喜ぶのは孫ではなく親であるわが子です。子の教育費は、親の責任です。大学まで行かせるなら、半端でないお金がかかります。それを教育資金の一括贈与で、孫の祖父母が負担してくれるのです。その分親の生活に経済的なゆとりが出ます。

宝くじに当選したような、想定外の不労所得が入ってくると、いかにまじめで意志の固い方でも微妙に辛抱がきかなくなるのです。本人が自覚することはあまりないと思いますが、晩酌の酒も発泡酒からビールになり、上撰から純米大吟醸になります。

◆ 教育資金の一括贈与は、子のためにならない理由。

教育資金の一括贈与も、保険料の暦年贈与の保険料とよく似ています。手間多くして、贈与した孫には喜ばれないのです。自由に使えるキャッシュがないので無駄遣いができないという点では、大金をもらっているにも関わらず感謝されにくいところがあります。

子や孫からは「こんなややこしいことせずに普通にくれたらええやん!?」という声が聞こえてきそうです。

実際のところは、孫に祖父母が教育資金の一括贈与をしてくれたら、両親は教育費の負担がなくなります。親は自分がもらったのと同じになります。孫二人の教育費で3,000万円になりますから、金回りがよくなります。自動運転の最新型テスラの新車でも買いたくなります。

これははっきり言って、子のためにはなりません。宮仕えのサラリーマンは、とっととやめて自由業に鞍替えしたい気分になります。

・金回りがよくなった親の事例。

資産家が娘の嫁ぎ先の外孫3名に教育資金の一括贈与をして、節税をはかった例があります。孫は何も知らず喜びもせず、その代わりその娘婿が焼き肉屋の店長風情でBMWを買ったという話があります。その娘婿は自分の給料の半分くらいを、長割り終身保険に入っているという家族思いの無計画です。教育資金の一括贈与はもらった孫やひ孫よりも、その親に影響が大きいようです。

教育資金の一括贈与のデメリットで一番気を付けなくてはいけないことは、孫ではなく子の生活に緩みや綻びを生む可能性があるということです。お金というものはたくさんあればよいというものではなく、必要なだけ巡り回ってくるというのがよいのです。あくまでお金はこの世だけに通用する方便です。しかしこの方便が、人の気持ちを変えるという問題を起こします。

◆ 教育資金の一括贈与とは、相続財産を一気に減らす効果。

教育資金の一括贈与は、名目上は個人資産の流れを良くして、消費を活性化することが目的です。制度自体は一般の国民にはとくにメリットもなく、縁が薄い仕組みです。言ってみれば、相続税が巨額になる資産家や富裕層向けの税制優遇制度です。

資産がたっぷりあって、相続税が山盛りかかるような財産家で、お孫さんが5人も6人もいらっしゃるような場合に、教育資金の一括贈与をおすすめすることがあります。

たとえば、お孫さんが5人なら7,500万、暦年贈与を並行して10年後には5,500万を非課税で贈与することができます。両方合わせてなんと13,000万も相続財産を減らすことができるわけですから、見逃す手はないと言えるかもしれません。(注:暦年贈与は相続発生前3年持ち戻し期間が7年に延長)

「教育資金の一括贈与で1,500万まで非課税に!」と言えば、聞こえはとてもよいのです。でもそれほどうまく相続税の節税にならない場合があります。

そもそも教育資金の贈与は、親からでも祖父母からでも扶養の範囲です。贈与とはみなされませんから、贈与税もかかりません。教育資金の一括贈与は、あくまでもまとめて贈与し、相続財産を一気に減らしたいときに意味がある仕組みです。

■贈与税の時効を気に病む人へこれで安心、秘策公開!

◆ 教育資金の一括贈与、改正点のデメリット2つ。

教育資金の一括贈与は、タイミングよくうまく使えると相続税の節税になる場合があります。しかし令和2年度の税制改正(令和3年4月1日施行)と適用期限の延長により、メリットをそぎ落とし、形だけを残した抜け殻のような制度になりました。

改正点:デメリット1

「一括贈与の残額持ち戻しが3年から無期限に。」

受贈者が23歳未満、在学中、教育訓練中である場合を除き、2019年度の改正より教育資金の一括贈与の残額が3年持ち戻しの対象でしたが、さらに厳しい条件が課されました。

贈与者が死亡した時点で条件を満たさない場合は、何年前の贈与であっても相続財産に持ち戻しとなりました。条件に当てはまらなければ、普通に贈与しているより厳しい扱いになっています。

※相続発生前3年以内の生前贈与については、相続財産として課税対象になります。その後、2023年の税制改正でこの持ち戻し期間(加算期間)7年に延長されました。

改正点:デメリット2

「孫の相続税が2割増しに。」

孫やひ孫への代襲相続では、相続税の2割加算というルールがあります。教育資金の一括贈与では、残額が相続税の対象となっても2割加算が免除されるという特典がありました。ところがこの特典がなくなりました。孫やひ孫への教育資金の一括贈与にかかる残額は、相続税2割加算の対象となりました。

■生前贈与の注意点とデメリット、相続税対策の失敗と老後の後悔。

◆ 使い残しは相続税がかからなくても贈与税という超矛盾。

教育資金の一括贈与は、改正により信託機関に預入した1,500万を、孫が
30歳になるまでに教育費として使いきらないと、残額に贈与税が課税されます。

医学系などのように学費が高い場合は、使い切るケースもあるかもしれません。国公立の大学や私立の文系では、まず使い切れないと思います。適用条件が教育費に厳しく限定されていますから、意外に関連の領収書を集めるのは難しいと思います。

贈与し過ぎで財産が減少し相続税がかからなくなっても、教育資金の一括贈与の残額に対しては贈与税が課税されるという、超がつく矛盾があります。

■ローンの援助と生命保険の名義変更はみなし贈与、贈与税が。

◆ 教育資金の一括贈与が節税にならないとき。

教育資金の一括贈与は、贈与者である祖父母が長生きすると、節税としての意味がなくなる場合があります。途中で相続が発生しないと、せっかく一気に多額を贈与した節税効果がないことになります。先行き短い資産家が、相続財産を一気に減らすテクニックとして教育資金の一括贈与がありました。

孫が社会人になるまで長生きされる予定であれば、教育資金の一括贈与などせずに、その都度養育費の一環として必要なだけあげれば何の問題も税金もかかりません。もちろん金融機関に対して、ややこしい手続きや領収書の細工をしなくてもよくなります。

暦年贈与でも、そもそも現金化して渡しておけば、何に使ったか痕跡は残りません。おすすめしているわけではありませんが、ことさらに教育資金であることを証明するための領収書集めは手間なだけです。扶養の範囲として、現金で渡しておけばよいのです。

その現金の内で、教育資金に使われるものもあるでしょう。孫ではなく親の生活費やローン返済に回ることもあると思います。現金には名前が書いてないし、色もついていません。車を購入する頭金にしても、区別ができるわけではありません。

養育費として渡す教育費に領収書は不要ですから、極端なことをしなければ、どこまでが贈与で、どこからが教育費かは、明確に判別できるものではありません。

◆ 後戻りできない教育資金の一括贈与の怖さ。

もう一つのデメリットについて、教育資金の一括贈与は、安易に信託契約しない方がよい理由があります。なぜかと言えば、この制度は不可逆的です。要するに後戻りでない仕組みです。

節税するつもりが、突発的な事態が発生したり資産が目減りして相続税がかからなくなったりすることもあり得ます。また、老後の資金が不足するような可能性も考えておかなくてはなりません。

人生何があるかわかりません。家ごと土石流に流されることもあれば、経営する会社が左前になることもあります。株式の暴落で巨額の損失を被ることもありえます。おどかすわけではありませんが、慌てる乞食はもらいが少ない、などと言います。

後戻りできない教育資金の一括贈与が、必ずしもベストの選択と考えなくてもよいかもしれません。

◆ 教育資金の一括贈与の改正とデメリット、まとめ。

教育資金の一括贈与は、直系の孫やひ孫の教育費として1,500万円を非課税で一気に贈与できる制度です。直系であれば、外孫にも適用できます。

その結果、孫の親であるわが子の暮らしぶりが影響を受けます。教育資金を贈与されれば、その分家計には経済的余裕ができます。教育資金の一括贈与は、実質的には孫の親がもらったのと同じことになります。

暮らしぶりが変わり、家計に緩みが出ます。家計の助けに出ていたパートもやめるかもしれません。車も買い替えるでしょう。しかしそれは宝くじ当選のようなことで、自力でない収入によるステイタスになります。

宝くじ当選で人生が変わる人は多いでしょう。1,500万円は、サラリーマンにとって大金です。それが教育資金の一括贈与がもたらす、最大のデメリットではないかと思います。

・使い切れない教育資金。

一方のデメリットは、今回の教育資金の一括贈与に関する改正で条件が厳しくなったことがあります。それは受贈者側が条件を満たすことができない場合、30歳までに贈与された1,500万を教育費の名目で使い切るしかないことになります。教育費に限定されると、孫の進路や状況によっては使い切ることがむつかしいのではないかと思います。

残額に課せられる贈与税や相続発生後に課せられる相続税が、あとあと問題になる可能性があります。実感として、養育費や教育資金はその都度必要なだけ渡してやるのが、シンプルで手間がかかりません。また家計への影響も少なく、後の憂いもなくなるように思います。

贈与税の配偶者控除はローン返済に使えるか?

終活では保険を見直すだけでなく、財産の整理が何より重要なわけ。

終活では保険を見直すだけでなく、財産の整理が何より重要なわけ。

老後とは何歳から?で検索すると65歳が一番多いようです。確かに定職はリタイヤしているお年です。公的な年金支給も65歳からとなっていますから、妥当なところかもしれません。老後という年代になると「終活」という言葉が気になりだします。

終活とは「人生の終わりのための活動」だそうです。人間が自らの死を意識して取組む身辺整理を、カッコよく言っているのではないかと思います。終活で最初に浮かぶのはエンディングノートかもしれません。しかしそれより大事なことは、保険の見直しと生前の財産の整理です。

本稿では終活における保険の見直しと財産の整理を考えます。

■相続の準備を終活と言わせない整理のコツをまとめ。

■あの世ではできない相続準備、生前にやることリストをくわしく。

◆ 終活の基本は生前の財産整理。

終活という言葉は、正直あまり好きになれませんが、それが生前の財産整理のきっかけになるならよしとします。生前の財産整理は必ずやっておかないと、後に残る家族が困ることになります。これがやってみるとなかなかの難物、集中的に取り組まないといつまでも中途半端で、整理は終わりません。

老後に十分な財産がある方は、相続税の節税をお考えになればよろしいのですが、普通のサラリーマン老後では、財産をしっかり管理して老後のキャッシュフロー表を作成することが大事です。

老後資金不足が言われていますが、それを補うためには計画的な収支計画を前提にした終活をお考え下さい。

終活を意識したら、それをきっかけに生前の財産の整理と申し上げました。それだけではなく老後破産をしないような収支管理が、終活以前の基本と言えると思います。

■間違いやすい生命保険の権利とみなし相続財産。

◆ 終活では無駄な保障はそぎ落とす。

生命保険で用意する保障は、保障の目的がありそれをカバーするものでなくてはなりません。終活する段階では保障の目的が変化します。終活の一環として、保険を見直すということが必要になります。

わかりやすく言えば子供たちが独立し、配偶者の生活費も心配がいらなくなれば、家族に対する保障は少なくすることができるはずです。

子供が小さいときは、将来にわたって必要になる生活費や学費をまかなうための保障額が必要です。しかし社会人となり自前で生活できれば心配がなくなり、親としての責任でかけている保障も必要なくなります。

契約している保険は「契約内容のお知らせ」が保険会社から毎年届くと思います。それを自分なりにエクセルにまとめて一覧できるようにすると、いらない保険、残す保険が見えてきます。

財産の整理は、エクセルで財産目録にまとめることです。その作業で見えない問題が見えてきて、理解が深まります。

生命保険では払える保険料を考えながら、最低限の保障を残します。がん保険と葬式代だけの終身保険を残すとか、配偶者の老後生活の保障を残すだとか自分の価値観でじっくり考えてみてください。

今となっては無駄になっている保障をそぎ落として、保険料の縛りから身軽になってください。詳しい人に相談するのがよいのですが、相手を間違えると保険をすすめられることになるかもしれません。

■遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。

◆ 老後の助けは終身保険。

老後に役に立つのは終身保険です。今は高嶺の花となりましたが、予定利率高かりし頃の終身保険は超お宝保険となりました。ただ終身保険は、死亡保険金を次の代に残すことが役割です。

大した相続財産もなく、築30年の老朽マンションを残しても迷惑がられるだけです。でも1,000万の終身保険を残せば、受取人となった子に心から感謝されると思います。

保険金というのは被保険者の死後にしか支払われません。ですから保険金を手にして喜ぶ顔は見られませんが、冥途の土産話にはなるでしょう。

保険金を受け取った子は無駄使いせず、一時払終身保険に加入します。またその子を受取人に指定して、親から引き継いだ財産を保険という形で固定し、寝かせておきます。

本当に万が一のとき、どうしてもお金が入用なとき、残してくれた親に感謝しつつ有効に活かしていきます。財産を生命保険にすることで、貴重なキャッシュの世代を超えた引き継ぎができますが、これも生命保険の機能の一つです。

◆ 終身保険の終身払の苦悩と払済。

終身保険で悩ましいのが、終身払いです。保険には払込満了と言って保険料の支払を終える時期がありますが、これをエンドレスにしたのが終身払いです。

なぜ終身払いにしたかと言えば、同じ保障でも保険料がだいぶお安くなるからです。保険料が払えなければ保障は確保できません。払える範囲でできるだけ大きな保障を望むと、保険料の支払期間が長くなります。その最終形が保険料の終身払いということになります。

定年を迎え、年金生活に入るとこの終身保険の終身払いが負担になります。保険金が受け取れれば負担はなくなりますが、かといって早めに旅立つこともできる相談ではありません。

経済的に余裕のある方や予定利率の高いころの終身保険は、60歳払込満了とか70歳払込満了などの設計ができました。終身保険は払込満了になると保険料の支払いが終わり、保障だけが一生涯続きます。

終活で保険を見直すとき、終身払いになっている終身保険をどうするかという問題に直面します。保険料を払い続けることができるなら、それがベストです。

ただし長生きすればするほど、損になるというジレンマが生じます。平均寿命を越えて生きると、払い込んだ保険料の合計が受けとる保険金より多くなるという逆転現象が起こります。

・保険料が払えなければ払済を選択。

収入と支出のバランスを考えて、老後生活の資金繰りに影響が出るような場合は、終身払いになっている終身保険は「払済(はらいずみ)」にします。

払済とは保険料の支払いをストップし保障だけを残します。うまい話はないわけで、それまで支払った保険料で終身保険を残しますから保障額は下がります。

保障がなくなるわけではありませんが、終身保険を払済にすると保障が低くなることを覚悟しなくてはなりません。保険料を払い続けることができないから払済にするわけで、背に腹はかえられないという選択です。

解約という判断もありますが、最後の手段です。緊急に資金が必要ということでなければ、解約ではなく払済という選択肢は次善の策と言えるかもしれません。

◆ 終活と保険見直し、まとめ。

終活と保険の見直しを考えながら、ふと相続問題と貧困で不幸にまみれながら小林一茶が詠んだ俳諧「これがまあ終の栖か雪五尺(これがまあついのすみかかゆきごしゃく)」を思い出しました。

終活も人生も思いどおりにならない嘆きのようでもあり、一茶らしくあっけらかんとしているようでもあります。ちなみに雪五尺とはなんと積雪が一メートル五十センチになっているということです。この句には、見方を変えれば、雪におぼれそうな絶望感があります。

終活とはきれいごとばかりではなく、相続問題を含めた財産管理です。その中には争いを防ぐ手段として遺言書を書くことも含まれます。終活にはかならずお金がからみます。決して終活という言葉のイメージほどに生易しいことではないと考えるべきです。

この年になって思うことは、財産目録と引継ぎ事項は整理しておきますが、ことさらに終活などと改まる気にはなれないのです。斜に構えているわけではないのですが、我ながら若干へそ曲がりです。

老後の相続対策は相続税がかからなくても必要な理由。

逓増定期の名義変更にトドメの通達、実質遡及の混乱!

逓増定期の名義変更にトドメの通達、実質遡及の混乱!

国税庁により、逓増定期保険の名義変更にかかる保険契約の権利評価の見直しが行われました。2021年6月25日、資産計上額で評価するという通達(所得税基本通達36-37)が発遣されました。さらには2019年7月8日までの契約に遡及されることとなり、逓増定期の名義変更スキームは完全に封じられました。

これまで保険契約は、解約返戻金の額で評価できました。しかしこれで解約返戻率が低い時に個人に有償譲渡し、解約返戻率が一気に高くなった時点で解約し、その差額の一時所得を得るというスキームはほぼ使えなくなりました。

中小企業の事業承継や利益コントロールにも影響が大きく、今後法人の利益はオペレーティングリースなどのハイリスクな仕組みにシフトするものと考えられます。パブリックコメントから通達の発遣まで一連の流れを検証しました。

■逓増定期保険の名義変更、ホワイトデーショックまとめ。

◆ 国税の所得税基本通達の一部改正で名義変更トドメ!

国税庁から発遣された通達を下記に引用(斜体部分)しました。「保険契約等に関する権利の評価」を見直すとは、簡単に申し上げれば、保険契約を譲渡する場合の金額を下記のように変更することになります。

【解約返戻金の額→資産計上額】

「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
(注)アンダ-ラインを付した部分は、改正部分である。

改正前

(保険契約等に関する権利の評価)

36-37使用者が役員又は使用人に対して支給する生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約に関する権利については、その支給時において当該契約を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額)により評価する。

改正後

(保険契約等に関する権利の評価)

36-37 使用者が役員又は使用人に対して生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約(以下「保険契約等」という。)に関する権利を支給した場合には、その支給時において当該保険契約等を解除したとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額、剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額との合計額。以下「支給時解約返戻金の額」という。)により評価する。ただし、次の保険契約等に関する権利を支給した場合には、それぞれ次のとおり評価する。

(1)支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利(法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、当該支給時資産計上額により評価する。

(2)復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等に関する権利(元の契約が法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、支給時資産計上額に法人税基本通達9-3-7の2の取扱いにより使用者が損金に算入した金額を加算した金額により評価する。

(注)「支給時資産計上額」とは、使用者が支払った保険料の額のうち当該保険契約等に関する権利の支給時の直前において前払部分の保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金等で処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を加算した金額をいう。

附 則

(経過的取扱い)

この法令解釈通達による改正後の所得税基本通達は、令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給について適用し、同日前に行った保険契約等に関する権利の支給については、なお従前の例による。

バレンタインショックで発遣された国税通達(法人税基本通達9-3-5の2)では、最高解約返戻率により、損金で落とせる割合が制限される仕組みとなりました。その結果損金割合は大きく削減され、資産計上額が大幅に増加することとなり節税効果がなくなりました。今回の法令解釈通達では、バレンタインショックルールで資産計上された額でしか、名義変更譲渡は認めませんというお達しです。

そもそも逓増定期の名義変更スキームは、解約返戻率の落差を利用して資金移動を行う仕組みです。買い取り金額を資産計上額とされたのでは、スキームが成り立たなくなり、逓増定期保険を個人で買い取る意味がなくなりました。

今回の通達の内容を精査、吟味するともはや抜け穴はなさそうです。所得税基本通達の一部改正で逓増定期の名義変更は、意味がなくなり完全にトドメを刺された格好になっています。

◆ パブリックコメントは意味がない応酬。

通達が出される前にパブリックコメントの募集ました。広く一般から形式的に意見を募る仕組みです。いろんな意見が出ても、国税庁の権力基盤の上に出される通達の内容が変わるわけではありません。いきなり出される通達の衝撃を和らげる、ソフトランディングの仕組みとして、パブリックコメントがあると考えればよいと思います。

パブリックコメントでは出された意見を集約して、国税庁の考え方を説明する形がとられています。いつもながら反論の機会はなく、国税庁の一方的な言い分を容認せざるを得ない仕組みです。そもそもパブリックコメントは、意味がない応酬となります。体裁だけの意見公募です。

■「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)
(保険契約等に関する権利の評価)に対する意見公募の結果について

◆ 実質的な適用遡及は現場の混乱を招く。

附則として(経過的取り扱い)の中に令和3年7月1日以後に名義変更する契約に適用するとあります。一見、既契約には遡及しないと取れなくもないですが、逓増定期保険の名義変更は通常、契約から4年から5年後に名義変更を行います。

同通達の適用開始までに名義変更を行ったものには遡及しないということですが、それは裏を返せば3年から4年前の契約でまだ名義変更の時期が到来していないものは、既得権を認めないということです。

もう少し正確に言えば、資産計上額の変更通達「法人税基本通達9-3-5の2」から資産計上額の見直しがルール化されましたので、それ以後の保険契約に適用されるということになります。はっきり言ってこれは遡及されていると感じるのは、一部の人だけではないと思います。

■国税庁 法人税基本通達9-3-5の2
(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)

国税OBなどでは、逓増定期の名義変更を得意としている方もかなりいらっしゃったはずです。それを配慮することなく、バッサリと既得権を認めなかった国税庁の強気の根源はどこにあるのでしょう。

◆ 節税保険の出口対策に逓増定期の名義変更が使えない理由。

バレンタインショックの駆け込み契約で、全額損金の保険に大量の契約が集中したことがありました。その解約返戻率がピークを迎え、解約返戻金による雑収入が大量に発生するのが令和9年・10年頃になるのはどこの企業も同じです。

この節税保険の出口対策として、逓増定期の名義変更をあてる設計をされていた方もあると思います。残念ながらその手も封じられましたので、発生する巨額の雑収入は保険以外の対策を考えるほかないのでしょうか。

保険代理店は、節税保険の雑収入対策としていろいろ提案がありますが、以前の全損保険のように、なかなかぴったりとはまりません。今後は設備投資、失効先送り、オペレーティングリース、一括償却などを組み合わせて、雑収入からくる利益を抑制するほかないところです。

◆ お宝保険の名義変更に影響はなし。

今回の通達は、過去のお宝保険の名義変更には、影響を与えないようです。通達によると「支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利」とありますのでほぼ関係がないと言えます。

全額損金であればそもそも資産計上額がないわけですから、問題はないことになります。長期平準定期などの1/2損金でも解約時期においては、解約返戻金の額は資産計上額を上回るのが普通です。よって過去の予定利率のよい時期に契約した保険を、後継者に相続対策として名義変更有償譲渡する手法は有効です。

◆ 逓増定期の名義変更にトドメ通達、まとめ。

最後の砦ともいうべき逓増定期保険の名義変更スキームは、今回の改正通達であえなく潰(つい)えました。見方によればリスク保障のための保険本来の目的に立ち返るという点では、一つの転機であるかもしれません。

それにしてもやはり国家権力は強権的に強かったということです。

コロナ対策やオリンピック対応で莫大な支出をしていますから、あらゆる税収の漏れをふさぎ、徹底的に搾り取る戦略です。

中小企業の立場から言えば、ひも付きの事業承継となる納税猶予制度よりも逓増定期の名義変更を残す方が、使い勝手が良いところがあります。しかし逓増定期の名義変更は、毎期保険料に充てられるだけの利益が出ている企業でなければ、使いようがありません。

通達が変わり資産計上割合が9割になるということは、それだけのキャッシュフローを4年以上寝かせていくだけの体力がなければどうしようもありません。

また、名義変更時に出る巨額の雑損失が法人の利益と相殺になり節税できなくては、意味がありません。それだけに逓増定期の名義変更ができる企業は、財務的に超優良でないと難しいわけです。またオーナー経営者が、財務一切の決定権を握っていないとできる相談ではありません。

今回の逓増定期の名義変更にトドメを刺した国税通達は、保険による節税対策封じの最終仕上げのような感じさえします。これにより苦労する保険営業、内心喝さいの保険営業など様々です。しかし、法人保険の活用範囲が大きく制限され、中小企業の選択肢が狭められたことは間違いないと思います。