生前贈与の注意点とデメリット、相続税対策の失敗と老後の後悔。

相続税がかかる方には、節税対策としての生前贈与の注意点を箇条書きにしました。生前贈与では、「税務署の視点」と「相続人の権利」という落とし穴があります。
税務署の視点では、相続税の税務調査で否認されるポイントについて書きました。また相続人の権利を侵害すると、争族の原因になるということがあります。
相続税がかかるかどうかの庶民層では、生前贈与で注意すべき点をデメリットとして取り上げています。人間にはある程度の年齢になると、見えてくるものがあります。やりすぎの生前贈与が招く人間模様について、経験から考察しました。
老後資金が破綻することがないような、後悔しない生前贈与とはどうすればよいのかを考えます。老いてからの資金的なピンチや相続人との不仲を招かないために、お考えいただく機会になれば幸いです。
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◆ 生前贈与の注意点5項目と落とし穴。

生前贈与の注意点を箇条書きにしました。とくに相続税がかかる資産家は、下記の5項目に細心の注意をしてください。詳細な解説は下にあるリンクをご参照ください。
1.生前贈与はもらった人が自由に使えること。親が管理すれば名義預金と判断され追徴課税。
2.贈与税の改正で生前贈与の持ち戻し(加算期間)が3年から7年に延長、相続税の対象。
3.毎年同じ金額で贈与すると、定期贈与と判断され総額に相続税追徴課税。
4.生前贈与がかたよると、他の相続人から特別受益として相続財産に持ち戻し要求。
5.生前贈与で遺留分を侵害すると、他の相続人から遺留分侵害額請求。
相続税がかかる人が生前贈与する目的は、相続税の節税です。相続税の税務調査で問題とされるのは、主に名義預金です。また贈与の王道である暦年贈与で定期贈与として否認されないことが重要です。通帳・印鑑の管理はもらった人、自由に使えること、念のため贈与契約書と、ときには贈与税の納税があれば確実です。
贈与税の改正により、生前贈与の持ち戻しが3年から7年へ順次延長されることとなりました。このリスクを回避する手段として相続時精算課税の選択をお勧めします。改正後の相続時精算課税制度では、別枠で持ち戻し不要の基礎控除110万円が新設されています。
相続人の立場では、相続財産に特別受益の持ち戻しという言い分があります。遺言書で特別受益の持ち戻し免除の意思表示を残すことで、争族を未然に防ぐことができます。さらに相続人それぞれの遺留分に配慮した生前贈与と遺言書作成があれば安心です。
※特別受益:特定の相続人が生前に被相続人から受けた贈与や遺贈などの特別な
利益
◆ 相続税がかかるかどうか、ぎりぎり庶民の生前贈与は老後の後悔。

相続税がかかるギリギリの庶民層では、生前贈与で財産を移転すれば、相続税がかからないことも考えられます。相続税がかからなくなっても、生前贈与には弊害や副作用がつきものです。
生前贈与で起こりがちなデメリットやトラブルをまとめました。節税策が功を奏して、税務署対応が不要になっても相続人や家族同士には、不平不満や不協和音が残りがちです。生前贈与は節税対策だけでなく、老後資金の確保や家族不仲に注意する必要があります。
1.生前贈与のしすぎで老後資金が不足。
2.贈与はもともと不公平、相続人・家族不仲の原因。
3.生前贈与の怖さは、もらうのが当たり前化。
4.生前贈与は子や孫の不老所得、金銭感覚に悪影響。
5.生前贈与は内緒が基本。
6.生前贈与でお祝いはいち早く、援助は最後の最後がコツ。
・度重なる贈与は貧乏の元。
祖父母や親は、子や孫が喜ぶとついつい贈与したくなります。帰省のたびにお小遣いを渡したくなります。何かとお祝いや援助をしたくなります。頭の中では、生前贈与で相続税の節税などと考えていると、生前贈与の額も大きくなりがちです。
子や孫も生前贈与を当てにしだすと、贈与をやめることが難しくなります。この生前贈与が度重なると巨額になることがあります。
何ごとも「過ぎたるは及ばざるがごとし」といいます。まだ最初から計画した生命保険の保険料のような、金額が固定している贈与は安全です。しかし思いつきの生前贈与は、老後貧乏の元になります。
■生前贈与の注意点とデメリット、相続税対策の失敗と老後の後悔。
・不慮の長生き、生前贈与は慎重に。
何があるかわからないという教訓は、今回のコロナ・ショックでもよくわかりました。人生には不慮の事故、思いがけない病気、想定外の支出、そして新型コロナウイルスのような誰にも予測不能な未知のリスクがあります。気がつけば、相続税の節税どころではないピンチが待ち受けています。
その先には老後資金枯渇という恐怖が、口を大きく開けているのです。コロナ・ショックで景気対策にお金を使いすぎたツケは、最後の砦ともいうべき年金に降りかかってくるでしょう。その結果、虎の子の年金は逃げ水のように先送りされ、老後の資金計画が狂いだします。
たとえば老後のリスクを拾い上げると、ほんの一部ですがあれこれお金のかかることがあるものです。
・老後リスクあれこれ。
・いつまで長生きするかわかりません。
・特殊詐欺に引っかかるかもしれません。
・自宅のバリアフリー改修にお金がかかります。
・海外旅行に行くとお金がかかります。
・孫にせがまれると車を買い与えてしまいます。
・台風や地震などで家が損壊し修理代がかかります。
・大病すれば高度先進医療費がかかります。
・老人ホームや特養の入所費もばかになりません。
・家のリフォームに思いがけない費用がかかります。
・持っていた株が値下がりするかもしれません。
・マンションの大規模修繕費が不足し追加出費があるかもしれません。
・運転免許を返上しても自動運転の車を買うかもしれません。
・子や孫が家を買うとき援助を無心してくるかもしれません。
今は良くても、老後は思わぬ出費がかさみます。見回せばわかると思いますが、FPが設計するファイナンシャルプランのように平坦な老後ばかりでもありません。調子に乗りすぎた生前贈与は、老後貧乏どころか老後破産になりかねません。
さすがに贈与してしまったものは、返せとは言えないのです。医学が進んだ結果、いやな言い方になりますが、不慮の長生きということもあります。老いてからの資金計画の狂いは修正ができません。それだけに生前贈与は慎重にと申し上げたいのです。
・生前贈与の怖さは、もらうのが当たり前化。
贈与とは、棚ぼたの不労所得である相続財産の前渡しです。そもそも期待していなかった贈与は、もらった子や孫にすれば年末ジャンボ宝くじに当たったようなものです。宝くじに当たった人は、柳の下にドジョウが2匹とばかり必ずまた宝くじを買います。
人間とはわがままにできていますから、一度もらってうれしければそれで満足することはありません。く余計に、二度目三度目の贈与に期待が膨らむのです。
贈与を当てにされると悲しいことですが、不仲の原因となります。期待を裏切ると不機嫌になり寄り付かなくなるのが怖いので、孫の顔見たさに贈与を繰り返してしまいます。こうなるともらうのが当たり前化して、果ては請求してきます。家を直すとか、車を買うとか理由をつけて援助を求めてきます。
請求金額もエスカレートし、もらう金額が少なくなると不満を言うようになります。生前贈与の怖さは、もらうのが当たり前化することです。こうなったら相続税の節税どころではありません。
・金の切れ目が縁の切れ目、生前贈与で不仲に。
下手をすれば、老後資金の枯渇につながります。挙句の果てが、親子でも金の切れ目は縁の切れ目となったのでは、贈与に意味がありません。安易に生前贈与などしたばっかりに不仲になったり、子や孫から疎(うと)まれたりすることにもなりかねません。
よく考えれば、相続税はあげる側の被相続人(親)が払うものではありません。払うのはもらった相続人ですから、節税など考えなくてもよいのです。あげなきゃよかった生前贈与、などとならないよう慎重にすべきなのです。
ある資産家の奥さんに、二次相続対策をおすすめしたことがあります。「老後資金は減らしたくないし、自分が相続税を払うわけではないので節税は考えていません。」と言われたことがあります。子や孫には宅配のピザ代は払ってくれますが、まとまった金はあげない主義です。実に賢明な方だと思いました。
■教育資金の一括贈与の最大のデメリットと改正点をわかりやすく。
◆ 生前贈与の注意点、親の思いと無心する子の心理まとめ。
親はある程度財産があると、無意識に秘密主義になります。正確な財産を子に伝えないのは、当てにされたくないという心理が働くからです。
その結果、親の老後資金を無心する子の心理は、財産を過大評価してしまいがちなのです。そうなると兄弟姉妹間で、早い者勝ちの無心合戦が始まります。親にすれば公平にとは言いながら、子を区別します。
もらう側の子にすれば自分がもらったことは忘れて、他の兄弟姉妹に贈与されると心底穏やかではなくなります。親に生前贈与を無心する子の心理は、子の配偶者を巻き込んで業(ごう)と欲(よく)が渦巻きます。
いかに冷静な人格者でも顔には出しませんが、こればっかりは逃れることができない性(さが)です。
・生前贈与の感謝は長続きせず。
生前贈与は相続税対策の王道です。しかし生前贈与のやりすぎに陥らないよう十分注意されることが肝要です。決して生前贈与は子や孫のためにはなりません。それどころかご自身の老後資金計画に狂いが生じます。
親心も目先だけでは子のためになりません。たとえ生前贈与をせずに嫌われても一時のことです。財産があれば、そして財産を手放さなければそのうち寄り付いてきます。
そういう意味での結論です。生前贈与は暦年贈与で保険料を贈与する生命保険がベストです。今すぐ使いえない保険料という贈与をもらっても、あまり喜ばれないという特性はあります。しかし保険料であれば、生前贈与の当たり前化にはつながらないので安心です。
あげるなら10万以内、それも不定期で、もらうことが思いがけないほど、もらう方はうれしさが増加するからです。
お金というものは、あったらあっただけよいというものではないように思います。少し足りないくらいがもめ事が少なくなります。
子供は可愛いから、お金を渡したくなるのが親心です。もらう側の子にすればいきなりの不労所得、そのときはうれしいし助かりますからくれた親に感謝します。
でもその感謝は長続きしません。何度もあげると今度はもらうのが当たり前、もらえなければ不満に思います。お金をあげた結果、疎まれるというか、金の切れ目が親孝行の切れ目というか、そういうものです。
・子供に金を残すくらいなら使い切りなさい。
我が子も含めて、お祝いはいち早く届けるのがコツです。しかし人への援助は、最後の最後でよいのです。援助はあわてないことです。
暦年贈与の難しさは「あげる・もらう」が当たり前になることの難しさがあります。あげたものを返せとは言えないですから、贈与ばかりがよいとも限らないのです。
せっかく自分の老後のためにためたお金ですから、思い切り散財すればよいのです。豪邸に住み高級外車に乗り世界一周旅行に行き、ブランド物で身を固めるのもよいものです。
お金は残さなければもめ事のネタは少なくなります。その方がお子達も人間的によく育ちます。子供に金を残してやりたい親心は痛いほどわかります。でも子供に金を残すぐらいなら使い切りなさい、ということも半面の真理としてあると思います。ただし使い切って、長生きして銭足らずなんてことにはならないよう、くれぐれも計画的にお願いします。

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