日経記事|生保、落日の「GNP営業」はミスリード。
日経Financialセレクションのなかに、生保、落日の「GNP営業」という記事が掲載されました。さすがにこの内容はhokenfpとしては見過ごすことはできません。
落日とは沈みゆく太陽、意味を読み取れば物事の勢いが衰えることのたとえです。
新聞記事でも週刊誌でも本文の内容とは必ずしも一致しない過激なタイトルをつける傾向がありますから、どうしてもミスリードになるようです。
タイトルの生保、落日の「GNP営業」とは、わかりやすく言えば生命保険営業ではGNP(義理・人情・プレゼント)営業は滅びゆく営業手法だと言っているのです。中ほどのサブタイトルは「非対面の解禁探る」とあります。非対面とはオンライン営業を意味します。
◆ 落日の「GNP営業」がミスリードな理由。
本文を読むとプルデンシャル生命の面談減少とソニー生命の非対面営業に関する投資の事例を挙げています。どちらの内容もアフターコロナの営業スタイルに非対面営業(オンライン営業)を加えることで営業活動のチャンネルを増やすということです。対面営業の原則を見直すというわけではありません。
タイトルだけを目で追うと保険業界全体がオンライン販売に移行するかのごとき誤解を生んでしまいます。実際、生命保険のインターネット販売は全体のわずか3.3%程度であり代理店や保険営業の面談による販売が基本です。
仮にオンラインで面談することになっても、少額ならあるかもしれません。しかし最終的に面談なしで新規の生命保険を販売することはないでしょう。面談して直接に契約者および被保険者に合わなければ、健康状態やモラルリスクが把握できません。
◆ オンライン営業の手法と顧客環境。
またオンラインで商品説明をしてもGNP営業がクロージングの最強の武器であることはなんら変わりません。GNP営業が落日を迎えることはあり得ない、と言えると思います。
新型コロナ感染症の見えない波の中で顧客を訪問することはやはり常識に外れる営業になります。ですからメールや電話、資料の郵送などはある程度有効な営業手法になるのはやむを得ないと思います。しかし、オンライン営業を展開するにはzoomやSkypeのようなアプリに習熟する必要があります。これは顧客にとっては重い負担です。
訪問してくれるなら、時間もとりますが、zoomで説明すると言われれば知っている営業でも断るところです。緊急に必要となる節税保険なら時間もとります。でもそれ以外の保障性保険商品の説明は急ぐ必要がないですから、オンラインでは面倒なのですね。
もしもオンライン営業で保険営業の熱意が通じて契約につながるケースがあるとすれば、面談チャンスを生かした密度の濃いプレゼン説明が必要になると思います。
◆ 保険営業の本質。
オンラインで面談するにしても保険営業の本質は同じです。保険販売においてGNPの効力が落ちることはそもそもあり得ません。むしろそこをどのようにオンライン営業に取り込むかがアフターコロナの保険営業の成否を分けることになるような気がします。
オンライン面談の弱点は情報不足です。ここで言う情報とは、相手に対する好き嫌いの判断に必要なかすかな表情や身のこなし、微妙な声の調子などです。どうしても全体的な雰囲気が伝わりにくいので、少ない情報で好き嫌いを判断することになるため“なじみ”が甘くなるのです。
またオンライン面談では、人に嫌われないド厚かましさが出しにくくなります。クロージングにかかる人間関係の瀬踏みや追い込みも、場の雰囲気に距離感が出るので保険営業としては空気を読みにくくなります。
また個人でも法人でも顧客にとればzoomやSkypeで面談するのはエネルギーと手間が必要、保険の面談では面倒くさいだけでなく必然性を感じられないのです。
保険営業とGNPについて過去の記事です。
営業研修では決して教えない保険営業の本質をまとめてあります。
◆ まとめ
保険営業には、現在すべてが最悪の環境であると言えます。こんな事態は過去になかったし、想定もできませんでした。
そう言った中で日経新聞の記事をテーマにアフターコロナ、ウィズコロナの処方箋ともいうべき点について保険営業のあり方を検証してきました。
保険営業はオンラインであっても直接面談であっても根本は同じこと。保険契約は親しくなり信用と信頼を得てからでないと成立しません。それゆえオンライン面談は対面以上の関係づくりの精度を工夫することが重要になるでしょう。
オンラインの面談に恵まれれば、それをチャンスととらえて自分のファンにするぐらいの準備が必要になるでしょう。とくにオンライン面談はアイコンタクトが重要だと思います。目は口ほどにものを言うというたとえもあります。相手に対する好意は目で伝えるぐらいの工夫が必要ではないかと思います。
保険会社は契約者の意向を考えずに非対面営業を推進するかもしれませんが、まず新規契約では通用しないでしょう。さらに既契約の保全でLINEを推進している保険会社もありますが、買う側としてはピンときません。
やはり生命保険は大きな買い物です。保険営業ではオンラインというのは補助的な手段で、それもある程度の人間関係ができてからという気がします。
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