遺言書を法務局に預けると失敗する理由。

遺言書を法務局に預けると失敗する理由。

遺言書を法務局に預けると、必ず失敗すると言うわけではありません。おすすめしている自筆証書遺言書の法務局保管制度に、注意すべき点があります。改めて本記事で補足しておきたいと思います。

自分で書いて自分で保管する「自筆証書遺言」と公証人役場で証人を立てて公証人によって作成される「公正証書遺言」があります。

自筆証書遺言書は、誰にも見せずにこっそりと気軽に作れます。金庫やタンスの奥、仏壇の底などに保管しておけば秘密にできます。

隠しすぎると永遠に発見されないようなことになります。旅立つ前には遺言書のありかを信頼できる誰かに伝える必要があります。

誰も信頼できないなら、貸金庫に預けておくか、法務局保管制度を利用するかという選択になります。一番確実なのは、自筆証書遺言はやめて、費用はかかりますが公正証書遺言にすることです。

遺言書の法務局保管制度についてはこちらをご覧ください。

■遺言書の法務局保管制度は自筆証書遺言書が検認不要、費用激安。

遺言書の効力がものを言う、絶対必要な7つのケース。

◆ 自筆証書遺言書、法務局保管制度のネックは?

自筆証書遺言書の気軽さがそのまま弱点になり、法務局保管制度のネックになってしまいます。

「遺言書」は「遺書」と違い法律文書ですので、決められたルールや形式要件があります。

別に難しい決まりではなく、自署、捺印、正しい日付、遺言書独特の言い回しがあります。誤字脱字はご法度などという、文書としては当り前のことです。しかし慣れていない素人の方には、見落としが出やすいかもしれません。

もう一つの弱点は、遺言者本人がご自分の意志で書いたかどうかを証明できないという点です。遺言者本人が、免許証などを提示して法務局に遺言を預けるという点では遺言書の真正性は担保されます。しかし認知症などにより遺言書を書く意志能力が欠如していたかどうかは、確認されないのです

■遺言書の様式等についての注意事項(法務省)

法務局は遺言書を保管する上での形式要件は確認しますが、中身には関与しません。

「遺言書保管所においては,遺言の内容についての質問・相談には応じることができません。」

とつれなく一言、目立つように赤字で書いてあります。

■遺言書か法定相続か遺産分割協議か、相続の優先順位は?

◆ 法務局保管制度は遺言書の法的効力を担保しない理由。

法務局では遺言者が、認知症ではなく遺言能力があるかどうかは、関知しません。本人確認と形式要件は確認してくれますが、相談に応じることはありません。さらには遺言書の内容には踏み込みません。

遺言書で物件が特定できていなくても、文字が間違っていて無効の場合でもちゃんと保管してくれます。言ってみれば、法務局の遺言書保管制度は、お知らせ機能付きの貸金庫だと考えてください。

法務局の立場からすれば、正しい形式の自筆証書遺言を作成する責任は、遺言者にあるというスタンスです。ご自分で書いた内容に自信がない場合は、やはり安全を期して専門家に相談されるのがよろしいかと思います。

事務仕事がお得意な方はネットで検索して、財産目録の書き方や自筆証書遺言の形式要件や物件の特定の仕方を勉強されれば、決して自分で書けないことはないと思います。

法務局の自筆証書遺言書保管制度は、遺言者の意思能力をめぐって争いになるようなときには不向きかもしれません。遺言の法的効力を担保しないというデメリットが出てきます。そうでない場合は、本当に便利でお得な仕組みです。

ただ、現在のところどこの法務局でも対応できるわけではなく、法務局の出張所では対応できないところがあります。また予約は必要ですので、お出かけ前に法務局のサイトで対応可能かどうか確認して、予約をされるとよろしいかと思います。

■預けて安心!自筆証書遺言書保管制度(法務省)

◆ 遺言書を法務局に保管すると・・、まとめ。

遺言書を法務局に預けると失敗する理由と見栄を切っていますが、法務局保管制度の利用に反対しているわけではありません。

むしろこの制度により自筆証書遺言書の手軽さと有効性が発揮できるなら、誠に結構なことだと言えると思います。

自筆証書遺言書の弱点が、法務局保管制度によりすべて補強されるわけではないということを申し上げたかったわけです。

少なくとも自筆証書遺言書の弱点である保管責任、改ざん、隠匿、破棄というリスクは完全に回避されます。また一度法務局に預けると、相続人に対して、公平に遺言情報を提供するという点でも安心感があります。

自筆証書遺言であれば、少しの知識と専門家のアドバイスがあれば有効な遺言書を残すことが可能です。何度でも書き直すこともできます。法務局保管制度にかかる費用は、あっと驚く3,900円です。

この制度の弱点は遺言書の法的拘束力を担保しないことを押さえておけば、有効に利用できると思います。

法務局では遺言書の存在と真正性は担保してくれますが、遺言者の意思能力は確認しません。

ですので、認知症が疑われる前にご自分の意志で自筆証書遺言を書き、専門家に見てもらってください。そしてご自身で身分証明をもって法務局に出かけて手続きをして下さい。

・そこまで言っても遺言書が書けない本音。

そこまで申し上げても、遺言書の作成に手が付けられない資産家がいます。自分のエンディングを確定させるような気がして、その気になれないそうです。

よく考えてみれば、遺言者にとればご自分が書いた遺言書が、相続発生後どうなったかを知るすべはありません。それは仕方がないことですが、後のことを考えれば、自筆証書遺言の法務局保管制度が始まったのを機に、そろそろ腰を上げる潮時かもしれません。

■遺言書を書かないリスクを体系的に解説したページ
遺言書は「書かないこと」こそが最大のリスク|法務・実務・人間心理の落と し穴 。

遺言書のメリット、とことん書けない本当の理由を行動分析で。

遺言書の効力が相続争いを防ぐ理由と検認の意味。

相続で見落とす端株の現金化、実際にやってみた売却手順。

相続で見落とす端株の現金化、実際にやってみた売却手順。

株式は相続前に証券会社を通じて全部売ったはずなのに、配当の案内が届くことがあります。

株数も中途半端な数で、配当金もわずかですが放置するのもためらわれます。配当の案内は取引のある証券会社ではなく、株式名簿管理人なる信託銀行証券代行部とあります。これってどうすればよいのか、通常の株の売買とどう違うかよくわかりません。

相続で株式を引き継いで、全部売却したつもりが、端株があったなんて聞いていないということがよく起こります。

■相続の準備を終活と言わせない整理のコツをまとめ。

◆ 端株とは、市場で売却できない単元未満株。

昔から株の売買をされていると、端株(単元未満株)がなぜ発生したのか、それはなぜ証券会社が管理していないか等の知識もあると思います。

経緯が分かっていれば、ご自分で株式名簿管理人である信託銀行証券代行部に買取請求しなくては売れないことも理解できます。

しかし相続で引き継いでしまうと、端株の仕組みが理解できていないのです。そもそも普通の株式と端株の違いが分かりません。

簡単に言うと「端株」です。難しく言うと本名は「単元未満株式」となります。

単元未満株式とは、売買できる単位に届かない半端な株式です。売買できる単位を一単元と言い、一単元は100株であったり1,000株であったりします。

なぜ売却できない端株が発生するかと言うと、会社分割や合併・減資や子会社化などで発生します。単元未満株は、配当はもらえますが議決権はありません。

一単元に届きませんから、市場で売却することはできません。しかし株式名簿管理人である信託銀行証券代行部に、買取りを請求することができます。

また発行会社が単元未満株の買増制度を採用している場合は、発行会社に買増しを請求することで、一単元にすれば市場で売却することが可能になります。

・端株の発生経緯。

経緯は、平成21年の株券電子化前に「ほふり(証券保管振替機構)」に株券を預託されなかった端株を株主名簿管理人が管理する「特別口座」(特別口座と特定口座は別物です。次項で説明します。)で預かることになったわけです。その後時間がたつと、株式として市場で売却できない端株のことは、次第に忘れ去られ、特別口座に取り残されたということのようです。

■パスワードリストの管理はエクセル、デジタル遺品の整理は解決。

◆ 相続財産目録で見落としがちな端株の厄介さ。

相続財産の目録を作るときに、見落としがちになるのが端株です。通常、株式は証券会社を通じて売買しますので、そのルートを通じ株式を売ればそれで終わりです。特定口座で取引をしていれば、源泉分離課税ですから証券会社を通じて所得税が納税されます。

明細を確認するだけで、特に申告を必要としません。

ところが端株が、特別口座にあれば証券会社は関知しません。単元未満の株は、そもそも市場で売買の対象とならないのです。「特別口座」とは「特定口座」とは異なり、株式名簿管理人となっている信託銀行などが管理しています。一字違いですが、別物の口座です。

そのため、証券会社で保有している株式を全部売却しても、特別口座に端株が残っている可能性があります。特別口座に端株が残っていても、証券会社から案内は届きません。

端株と言えども株主ですから、配当があります。配当を通知する案内が届きますから、端株が存在していることを気が付かないことはないようになっています。

・端株は買取り請求が必須。

しかし実際の株の売買とは全然別のルートで、端株は買取請求をしないと残り続けます。見落としがちな、端株の厄介さがここにあります。

端株を放置した結果、相続が発生すると売却するためにはさらに手間がかかります。たとえ一株でも、相続してから買取請求する手順になります。それゆえ相続関係を証明する資料をそろえなくてはなりません。

士業の先生にお願いするほどの金額でもなく、下手をすれば売却によって経費がマイナスになりかねないやっかいな存在、それが端株(単元未満株式)なのです。

■終活では保険を見直すだけでなく、財産整理が何より重要なわけ。

◆ 相続も買取請求もできない名義株。

端株の中には、先代名義の端株や兄弟名義の端株が残っていることもあります。そのままにしておくと名義株と呼ばれる他人名義の株となり、処分するときに困る原因になります。

大した金額でもないのに、売却するとなると手間がかかります。かといって放置するとさらにややこしくなりそうで、他人名義の端株は困りものです。

昔の相続から漏れている端株の売却は、株式名簿管理人である信託銀行に実際に電話して、簡単に買い取り請求を済ませる方法はないか交渉しました。

しかしサポート窓口の担当者は「たとえ一株でも相続の場合は関係書類をそろえていただく必要がございます。」とのことで、丁寧ながら冷たくあしらわれました。

(関係書類とは遺言書もしくは遺産分割協議書、相続関係を証明する戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、相続人がなくなっている場合は戸籍の除票や住民票の除票など)

・放棄はできないが受取拒絶は可能。

ただ放棄できるか聞いたところ、放棄するような書類はないが放置はあり得るそうです。しかし郵便物が届くのは何とかしてほしいと言ったところ、郵便局に申告して宛名の住民は亡くなっているので受取拒絶をすればよいそうです。

それにより、自分のものではないと主張することは可能だそうです。少額であれば放置&受取拒絶が、一番簡単な方法だと思いました。

■郵便局、受取拒絶

迷惑な郵便物等が届けられた場合、受け取りを拒絶することができます。

不要な郵便物に付箋を貼り、赤のペンで受取拒絶と書き、押印または署名します。それを郵便ポストに投函するか、郵便局の窓口に持っていくと差出人に返還され、以後届かなくなります。 ただし、開封してしまうと返還ができませんのでご注意ください。

◆ OB税理士に確認、どうにもならない端株は、放置することも。

資産税担当の元国税調査官であったOB税理士に聞いたところ、端株は適切に買い取り請求することが正しい処理だそうです。

しかし相続では、自分のものではないと主張することができるそうです。端株は額が小さいことが多いので、相続税の税務調査で問題化することはあまりないという見解でした。

基本的にはやはり、端株であっても財産には変わりがないので、遺言書への記載(端株を遺言書に書くようなことはないので、記載が無いと遺産分割協議が必要)、名義変更等手続きが必要となります。面倒なので、相続が発生する前に端株の買い取り請求をされることをお勧めしますという判断です。

名義株に関しては、その方が生存されているならその方の名前で買取請求をお願いすることが簡単です。そして金額がわずかなら、実際の名義の方に贈与してしまうという方法もあり得ます。

実際は、真正なる所有者への名義変更の手続きが面倒なので、金額的に大きなものでなければ上記の簡易な方法を検討されてもよろしいかと思います。

・名義株は放置が正解。

名義株のご当人が、故人だと面倒です。相続手続き又は真正なる所有者への変更後、買取請求になります。この場合は、より手続きが複雑になります。複雑な手続きを取ってまでわずかな金額を取得したくないということなら、手続きをされずに放置し、自分のものではないと主張(相続税では申告しない)することも考えられます。

あまりお勧めできない方法ですが、OB税理士の経験から実際にはこの方法を取ることもあるそうです。結局、放置&受取拒絶がもっとも手間いらずですので、筆者が担当したケースもそのようにおすすめした次第です。

相続での借金は法定相続、債権者保護の理屈に注意。

相続税の起源は戦費調達、高すぎる日本の相続税。

相続放棄は親戚に迷惑、無価値土地の放棄できない管理責任。

相続放棄は親戚に迷惑、無価値土地の放棄できない管理責任。

相続放棄は、口で言うより難しい問題があります。自分だけが放棄すればよいというものでもありません。だれにも親兄弟や親戚があると思います。相続放棄をすれば、相続権が親戚におよぶこともあり、迷惑をかけることになりかねません。

本来の相続人が相続放棄をすることで、被相続人の親や兄弟姉妹、果ては甥姪にまで降ってわいたような相続人の責任というお鉢が回ってくることがあります。

相続人が相続放棄をするくらいですから、それなりの理由があるわけです。事情がよくわからない親戚が相続放棄の期限である3カ月を過ごしてしまうと、とんでもないことになることがあります。

借金が財産を上回っていれば何も考えずに、3カ月の期限を待たずに相続放棄の手続きを家庭裁判所で行えば、責任とリスクは回避できます。そころが、不動産のような負の財産というものは、見た目だけでは判断が難しいのです。素人では、その価値判断を誤ることが往々にしてあります。

■相続での借金は法定相続、債権者保護の理屈に注意。

◆ 知らない間に親戚が相続人代表、固定資産税納税通知書が。

法定相続は民法で規定されていて、遺言書で指定がなければ法定相続に従うことになります。配偶者はいかなる場合でも相続人ですが、第一順位として子や孫やひ孫が相続人となります。

子がなく孫やひ孫もいない場合は、被相続人の父母や祖父母が第二順位の相続人になります。父母も祖父母も亡くなっているような場合は、第三順位として被相続人の兄弟姉妹や甥姪が相続人として登場することになります。

先順位(せんじゅんい)の相続人と言いますが、第一順位の相続人がだれもいない場合、もしくは相続放棄したような場合は第二順位の相続人が相続することになります。

・兄弟姉妹、甥姪に想定外の相続権。

第二順位の相続人が亡くなっているか、相続放棄しているような場合は、思いがけず第三順位の兄弟姉妹や甥姪が相続人となることがあります。被相続人の兄弟姉妹や甥姪にとれば想定外というべき相続の権利です。

先順位の相続人が、相続放棄したことを知らなければ、後順位(こうじゅんい)の相続人は自分が相続人となっていることは知る由もないわけです。

親戚も疎遠になっていると連絡が取りづらいですし、そもそも相続放棄したら遠い親戚に迷惑をかけるかもしれないということを知らないということもあり得ます。

・相続放棄は後順位の相続人に連鎖。

連絡できれば、事情を説明し相続放棄をおすすめすることもできます。しかし何もせずに先順位の相続人が、それを放置すると債権者や役所からの固定資産税通知書などにより相続人となっていることを知らされることになります。

後順位の相続人にとっては寝耳に水、相続財産や負債の状況が分からないだけではなく、まともな不動産か負動産かの判断もできません。

相続放棄連鎖の恐怖と書きましたが、相続放棄は後順位の相続人に連鎖していきます。先順位の人が相続放棄するなら、それなりの理由があるからですから、そのことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きをすることです。

相続順位

・配偶者は常に相続人

・第一順位:直系卑属(子や孫)および代襲相続人

・第二順位:直系尊属(父母や祖父母)

・第三順位:兄弟姉妹および代襲相続人(甥や姪)

■相続税の連帯納付義務は重い、逃れるすべがない。

◆ 相続放棄は親戚に迷惑、被相続人の兄弟姉妹の相続放棄。

先順位の直系卑属や直系尊属が相続放棄をしたり、亡くなったりしていると相続権は、親戚である第三順位の兄弟姉妹に及びます。兄弟姉妹もなくなっているとその代襲相続人である甥や姪に及びます。

相続放棄をしていれば、代襲相続人に相続権は及びませんから、兄弟姉妹が相続放棄をすれば、甥や姪は相続とは関係がなくなります。その結果相続人はいなくなります。

代襲相続については、民法887条2項に規定されています。

民法887条2項

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当(=相続欠格事由に該当)し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。

この規定が、兄弟姉妹についても準用されます(民法889条第2項)。

■連帯保証人の責任が相続されるとドツボの相続人。

◆ 親戚の相続放棄の手順を整理。

先順位の相続人が、事情で相続放棄を選択したことがわかったら、速やかに事情を確認して、実害が及ばないよう3カ月以内に相続放棄の手続きをしなくてはなりません。

慣れない方には多少面倒な手続きですが、下記の手順に従い余裕をもって相続放棄をすすめてください。色気を出して価値がない不動産を引き継いで、あとで困ることがないよう割り切ることが必要です。

相続人となる可能性がある親戚とは、被相続人の兄弟姉妹、さらには甥姪までです。この範囲の相続関係を証明するための戸籍集めは大変だと思います。被相続人に関する 相関関係説明図を証明する戸籍をもれなく揃えなくてはなりません。(これは司法書士などの専門家に依頼した方がよいかもしれません。)

・相続放棄の手順。

①戸籍を揃える(根気よく役所の窓口で聞けばわかります。)。

相続放棄に必要な戸籍や住民票などを揃えます。

・被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本(原戸籍まで)

・子、孫等の戸籍謄本(相続放棄・生存・死亡にかかわらずすべて)

・父母、祖父母等の戸籍謄本(相続放棄・生存・死亡にかかわらずすべて)

・亡くなった被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票

・被相続人が死亡した記載のある戸籍謄本

・相続放棄申請人である兄弟姉妹の戸籍謄本

②相続放棄申述書に必要事項を記載、家庭裁判所に提出。

・相続放棄申述書に必要事項を記入

・相続放棄申述書と関係書類一式を被相続人最後の住所地の家庭裁判所に提出

③相続放棄の照会書を返送。

相続放棄の申立てを行うと、家庭裁判所から約1~2週間後に相続放棄の申述照会書が届きます。相続放棄の意思確認のためですから、正確に回答し、裁判所へ返送。

④相続放棄申述受理通知書が交付

照会書を返送すると、相続放棄申述受理通知書が郵送されてきます。これで相続放棄の手続きは一件落着です。相続放棄をしたことを証明する相続放棄申述受理証明書は、必要に応じて請求。

■親の借金は相続放棄しても受け取れる生命保険金の有り難さ。

◆ 田舎負動産、老朽化マンションは買い手なし。

価値が低いあるいは、維持管理費用でマイナスになる不動産は相続する価値がありません。築年数が古いマンションなどは言うに及ばす、田舎の田畑、山林、人が住まなくなった田舎の空き家などは固定資産税や管理費用が一人前以上にかかるにもかかわらず、売りに出してもほとんど買い手はつかないのです。

費用ばかりがかさんで、いつまでたっても処分できないという、まさに「負」の財産となり果てることがあります。そうすると、よく知らずに相続してしまった親戚は、相続したものの役立たずの負動産に泣かされるということが起こります。

素人には不動産が資産か負債かを判断することは、誠にむつかしいと言わざるを得ません。価値がない負動産は、売れないだけでなく未来永劫に費用負担が発生し所有者を追い込みます。売れない、換金できない不動産は負債と考えるべきなのです。

負動産ですから、借金と同じです。利払いとして固定資産税や管理費用負担が発生します。ところが負動産と負債との違いは負動産には完済がないということです。

負動産の相続には、リスクがあることを理解していても、責任上相続人として負動産の責任を引き継ぐことがあります。その気持ちの裏にはいつか売れるかもしれないという期待があります。その期待が甘いことはやがて明らかになります。

・負動産は管理費用が発生。

また、負動産の管理には固定資産税だけでなく、家なら火災保険、定期的な修繕管理が必要になります。マンションなら住んでいなくても共益費や修繕積立金などの費用は免れません。

田舎の田畑なら除草などの管理費用が発生します。所有することによる実入りは一銭もないのに、毎年結構な費用が発生しますが、これを免れるすべは売却するしかないのです。

交通の便がよろしくない田舎の家や築年数が過ぎた老朽化マンション、大型の耕作機械が入らない狭い田畑などは、相続してしまうともう本当にどうしようもありません。やっかいなのは、相続人が不動産を負動産と認識できるのはずっと後になってからという気の毒さなのです。

・田舎の不動産は売れない金食い虫。

お金に変わるかもしれないという期待をそう簡単に見切れるものではないのです。経済的によほど豊かであれば、先々のやっかいなことから身を引く判断もできるかもしれませんが、そうでなければ負動産のマイナス面を見抜くことは、さらにむつかしいと思います。

ここにえらい力を入れていますが、経験者です。一見土地持ちになったような裕福感がありますが、毎年毎年のコストに追われるとこれはまずいと売る算段を始めます。ところがいくら値下げしても、買い手の反応がないのです。そのまま時間だけが経過していきます。

近隣のスーパーマーケットとドラックストアは撤退し、小学校は隣町に集約され役場の支所は本庁に統一されます。バスが走らなくなり市町村がマイクロバスを走らすようになると寂れた感がますますつのります。

信号待ちをしている車はもみじマークばかりになります。地方の市町村の人口減少と高齢化は不動産価値をどんどん引き下げます。そこに残るのは固定資産税と負動産だけとなります。

相続権が回ってきたからと言って、安易に不動産を相続してはいけないという体験談です。相続放棄には、先順位の相続人が相続放棄するだけの理由があると言うことです。よって相続放棄したらそのことを後順位の相続人である親戚に、正しい情報として伝えてあげる責任があると言うことです。

■相続税がかからなくても遺留分の大問題。

◆ 相続放棄に落とし穴、放棄できない管理責任。

相続放棄で注意すべき点がいくつかあります。負動産に注意するだけでなく、相続放棄を申し立てて家裁に認められるためには、「相続したとみなされる行為」に注意が必要です。

たとえば被相続人の預貯金をおろしたり解約したりしてはいけません。家賃などの滞納があっても相続放棄を盾に拒否してください。

遺産を相続したとみなされると、後に改めて相続放棄をすることは法律上認められていないので、誤解になるようなことは厳に慎むという感覚が大事です。

3カ月以内に家庭裁判所で相続放棄の申立てを行い、受理されれば無関係となり相続問題から解放されます。相続放棄すれば知らぬ存ぜぬで押し通せばよいのですが、負動産ではそうはいかない場合があります。

相続放棄が認められれば、相続財産に含まれる不動産の固定資産税を支払う必要はありません。しかし困ったことに相続放棄が認められた場合であっても、不動産の管理義務が残ってしまう可能性があります。完全に負動産と縁が切れないということも起こりえるのです。

その辺は以下に詳しく書きました。

■相続登記義務化でも登記をしない本当の理由が深刻。

◆ 相続放棄連は親戚に迷惑、無価値不動産相続人、まとめ。

相続放棄をするということは、結構難しい判断になるということです。さらには、相続放棄によって迷惑をこうむる可能性がある親戚などに配慮する必要があります。

とくに、第二順位や第三順位の相続人にとっては想定外の相続となることが多く、被相続人の財産がどうなっているのか、負債がどれくらいあるのか、不動産の価値はどうなのかという情報が十分でないこともあります。さらに縁が薄いと相続情報が手に入らなかったり、正確な情報が伝わらなかったりすることがあります。

明らかに負債が多い場合は、ためらわずに相続放棄の手続きを進めればよいのですが、不動産ばかりは価値があるのか、将来的な見込みなどを含めて財産的価値判断を誤る可能性が高くなります。

・負動産は資産ではなく負債。

無価値どころか経費倒れの負動産を間違って相続してしまうと、結局処分に困り次の代まで禍根を残すことになりかねません。

不動産が負の財産であるという考えは、まだ定着していませんが法整備が進めばその辺のマイナス要因も見えてくるようになると思います。地方の不動産の実質的価値は下がり続けていると考えてよいと思います。

そのうち値上がりするとか、近くを道路が通れば言い値で売れるなどという夢物語をあきらめて、手放せるときに手放すことが大事です。長年住んだ家や、幼いころの思い出が詰まったふるさとの屋敷や田畑を手放すことへの抵抗感はよく理解できます。

あわよくばテレワークの基地として田舎暮らしを考えているというなら別ですが、そうでなければ見切りは早い方がよろしいようです。まるで自分自身に言い聞かせているような記事になりました。

■所有者不明土地の原因と無責任を問えない3つの理由。

相続で遺留分の放棄をさせることはできるか、その意味と手続き。

縁切り覚悟!孫養子と偽装離婚で相続税の節税。

縁切り覚悟!孫養子と偽装離婚で相続税の節税。

相続税を節税するためなら長年連れ添った配偶者との離婚も、孫との養子縁組も辞さないという資産家もいらっしゃいます。

せっかく死に物狂いで稼いでこれまで守ってきた資産を、相続で失いたくないというお気持ちです。グレーゾーンの節税対策はあまりおすすめできませんが、孫養子は見かけます。

また偽装離婚か本当の離婚かはわかりませんが、会社が左前になりヤバくなる前に、資産を配偶者に名義変更し離婚する事例は珍しくありません。相続対策で離婚を検討されるケースはさすがにあまり見かけません。

しかし、離婚による慰謝料も財産分与も贈与税がかかりませんから、節税の動機としては十分なのかもしれません。

■相続税調査は8割NG、元国税OB税理士にツボを確認。

◆ 孫養子で相続税を節税する裏ワザ。

孫を養子にすると相続税が軽減されます。裏ワザと書きましたが、判例からするとルールに従い許容範囲であれば特に問題とはならないようです。

孫を養子にすれば、子と同じ相続人になります。相続人が一人増えれば相続税の基礎控除一人分の600万が控除できます。また生命保険の死亡保険金の非課税枠500万と死亡退職金控除500万も控除できます。

それだけではなく、相続人が増えると相続人ごとに計算する相続税では、税率が下がる可能性があります。結構節税効果が見込めますから、節税目的の孫養子は見かけます。

ただ、孫養子は節税養子と言われます。養子は何人とっても良いのですが、節税対策となると一人だけ、子がいない場合で2人までと決まっています。

確かに戸籍だけのことではありますが、そこまでするかどうか、迷いもあると思います。何も知らない孫が、祖父母の養子になることを望むわけもなく、それよりも、他の相続人の取り分が少なくなりますから、相続人間の不公平の原因になります。

よほどしっかりと考えた遺言書を残さないと、節税以前の問題として争族の種まきになりかねませんので慎重にと申し上げておきます。

■子がないと被相続人の兄弟に相続権、遺言書がないと嫁の悲劇。

◆ 偽装離婚で相続税を節税する裏ワザ。

偽装というからには、離婚を装っているということです。実のとことは節税を目的とした一時的な離婚で、ほとぼりが冷めれば再婚するという裏ワザが偽装離婚と言われます。

そもそも相続では配偶者は優遇されています。一次相続では1億6000万もしくは相続財産の半分までは、相続税がかからずに配偶者が相続できるという特典があります。

それならあわてて偽装離婚しなくてもよさそうなものですが、実際はもっと強欲なテクニックなのです。 離婚による慰謝料も財産分与も非課税という特典が利用できるのです。

一般的には離婚するとときは、夫婦で築いた財産の半分は配偶者に財産分与を受ける権利があります。この場合財産分与によって取得した財産には贈与税がかからないことになっています。

この配偶者の権利に対する考え方は相続税と同じです。また離婚に際して慰謝料を請求することもあると思いますが、慰謝料も被った損失の補填ですから課税対象にならないわけです。

偽装離婚して財産分与と慰謝料を非課税で受け取っておきます。その後同じ相手と数年後に再婚すれば、もう一度相続税の配偶者控除で半分を相続税無しで受け取れるという寸法です。

偽装離婚で財産を配偶者に移しておくことができれば、相続財産の生前贈与と同じことになります。その結果、高額な相続税を回避することも可能になるわけです。

偽造離婚で節税する裏ワザは、グレーというよりやりすぎの感があります。離婚件数は増加していますので、税務署も追い切れていないということが実情のようです。

偽装離婚のつもりが、財産を手にした配偶者の気が変わり再婚を拒否されるということもないとは言い切れません。庶民は偽装離婚などせず平和に暮らすべきです。

偽装離婚は資産家の税逃れだけでなく、生活保護や児童扶養手当の受給目当て、破産する場合の財産隠し(借金逃れなど)、保育園に優先権取得等があり、決してコロナ禍の貧乏庶民に関係がないとも言えないのです。

■相続税が高いという誤解による過度な節税対策に落とし穴。

◆ 孫養子と偽装離婚、まとめ。

孫養子は戸籍に残ります。犯罪性はありませんが、孫養子を節税目的で行ったとしても、取り分が減る相続人間に波風が立つのは致し方ないところです。

偽装離婚はそれが節税目的の偽装であれば、公正証書原本不実記載罪となり犯罪です。どちらもおすすめしているわけではありません。仮に裏ワザテクニックで節税できたとしても、どうも引っ掛かりが残るのが人間というものです。

ましてや偽装離婚では、枕を高くして寝られないというデメリットがあります。財産やお金は、この世だけに通用する方便です。こだわりすぎると道を誤りかねません。穏やかに暮らすという選択肢も考える必要があるように思います。

生命保険金を分けると相続税がかからなくても贈与税が。

タワマン節税に国税の網、伝家の宝刀が勝訴。