遺言書か法定相続か遺産分割協議か、相続の優先順位は?

遺言書か法定相続か遺産分割協議か、相続の優先順位は?

遺言書があれば、遺言書に従うのが普通と言えると思います。厳密な話では、相続人全員が合意すれば、傍目(はため)に不公平であろうと遺産分割協議で決着できます。長男が他の相続人を押し切って独り占めしようと、他の相続人の納得があれば、どのような分け方でも誰からも文句を言われる筋合いはありません。

そういう意味では、遺言書か法定相続かあるいは遺産分割協議かという優先順位は、相続人全員が合意できなければ、遺言書優先となります。遺言書がなければ相続人同士の協議になり遺産分割協議をまとめることになります。話がまとまらないような場合の落としどころは、法定相続に従い遺産分割協議書を仕上げて実印を押すことです。

■遺言書の効力がものを言う、絶対必要な7つのケース。

◆ 遺産分割の話し合い期限は10カ月。

相続が発生したとき、相続人は亡くなった親の財産をどのように分けるか決めなくてはなりません。相続税がかかる場合は10カ月という期限がありますが、相続税がかからなければいつまで揉めていてもかまいません。

とは言っても相続税の基礎控除が下がったために、本来相続税など関係がなかった層も、相続税の心配をしなくてはならなくなりました。このためぎりぎりのボーダーラインにいると思われる相続税予備軍では、やはり10カ月がめどになります。相続税の申告期限までに決着を考えないとまずいことになる可能性があります。

また、相続税がかからないような相続では、正式な遺言書を書くこともあまりないようです。遺言書がなければ、相続人同士が相談して分け前を決めることになります。その記録を残して、実印をつけば遺産分割協議書となります。遺言書がない場合の遺産分割は、法定相続を基本に特別受益や介護に対する貢献、それぞれの家庭の経済的な事情により、話し合いで決めなくてはなりません。

◆ 遺言書を破棄するとどうなるか。

正式な形式要件を満たした遺言書は、破棄したり偽造したりすれば犯罪です。

有印私文書偽造罪が成立し刑事罰の対象となります。

ただ誰も存在を確認したことがない遺言書を先に見つけた相続人が、自分に不利な遺言の内容を知り、破棄するということはあり得ないことではありません。

それゆえ遺言書の保管は、タンスや仏壇・貸金庫などではなく、公正証書遺言にするか法務局保管制度を利用すべき理由があります。

遺言書の破棄や偽造がバレた場合、刑事罰だけではなく、相続欠格となり相続権を失い元も子もなくしてしまうかもしれません。遺言書を破棄したい誘惑にかられたとしても、そこは自重しなくてはならないわけです。

遺言書を破棄すれば罪になりますが、遺言書を相続人全員が無視して相続人合意の上で遺産の分け方を決めることは可能です。親不孝かもしれませんが、違法ではありません。

遺言書を無視して相続人同士が分け方を相談しても、利害が絡みますからそう簡単に話がまとまるとも思えません。有効な遺言書がある場合は結局、遺言書に従わざるを得ないと言うことになりそうです。

■遺言書を破棄したら罪になるかを事例で説明。

◆ 相続人に反対者がいれば遺言書は無視できない。

相続は争族、あるいは争続となることが多いのは、金銭が絡むゆえの宿命でしょうか。遺言書があっても相続人全員が合意し、納得できれば遺言書と異なる遺産分割協議でもかまわないと申し上げました。

しかしそれは裏を返すと相続人に一人でも遺言書を無視するような遺産分割協議に反対者がいれば、遺言書に従わなければいけないということです。

遺言書でも遺産分割協議でも、相続人全員が納得できる分け方があるとも思えませんから、遺言書を無視して遺産分割協議となることは、そもそも無理があります。

また遺産分割協議では議長がいるわけでなし、相続権がない外野が口うるさく収まらないこともあります。相続人は主に配偶者と子である兄弟姉妹ですから、発言力の強いものが仕切ることになると余計に反発が出てきます。結局、遺言書を無視することはそれほど簡単にはできないということです。

■遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。

◆ 遺言書>遺産分割協議>法定相続、優先順位まとめ。

相続での優先順位を検証してきました。庶民の相続では、遺言書もなければ改まって遺産分割協議をすることはないと思います。

相続税はかからないですからそのまま二次相続まで放置するケースが結構あるように思います。昨今の田舎相続では、売れない実家と耕作放棄した農地が遺産として残ります。

価値が低い負動産は、固定資産税と管理費用がかかるだけなので譲り合いになります、というか押し付け合いになり妙な争族が勃発する気配です。都市部では財産はあってもキャッシュがないという相続が、身内のもめごとを複雑にします。

財産があってもなくても、人と人がからむ相続ではそれほど簡単に収まりません。

道は譲れても相続は譲れないのが人間の性(さが)です。

そうであればこそ遺言書は、相続で効力を発揮します。遺産分割協議だとか法定相続だとか考えなくても、相続人が一番納得できる仕組みが遺言書だと言えると思います。

遺言書を書くときは遺留分に配慮し、キャッシュが足りない場合は生命保険で代償分割が可能な契約を結んでおくことです。

生命保険では死亡保険金控除、相続人一人当たり500万の控除が大きく、一石二鳥になると言えると思います。遺言書か法定相続か遺産分割協議か、相続の優先順位は?と問われれば、生命保険と遺言書のセットが最右翼の対策と言えるのではないかと思料いたします。

遺言書優先の原則と遺産分割協議の矛盾について。

遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。

相続税がかからなくても遺留分の大問題。

相続税がかからなくても遺留分の大問題。

相続税がかからないフツーの庶民の相続でも、遺留分に対する権利の主張がまかり通ります。どの相続人にも、相続放棄しない限り、民法で定められた遺留分の権利があります。その結果、争族は熾烈な身内の争いに発展しがちです。

親が遺言書で遺産分割を指定したとしても、同居する長男だけにすべてを相続させることはできません。

相続はその家庭内の問題ですから、相続人が納得していれば問題になることはありません。しかし、遺留分に不満がある相続人がいれば、往々にして争族の原因になります。

たとえ相続税がかからなくても、特別受益を含めた遺留分の問題は、円満な相続の障害になることがあります。遺留分のイロハから、時効までじっくり解説します。

■特別受益の持ち戻しが争族の火種になると大炎上。

■相続での争いは譲れない人間の本性をさらけ出す深い理由。

◆ 遺留分とは、基本的な権利。

遺留分とは、法定相続人に最低限保証された相続財産を取得する権利です。法定相続人は配偶者、子、両親、兄弟姉妹ですが、兄弟姉妹には遺留分はありません。

■兄弟に遺留分がなくても納得できる相続の深い理由。

法定相続人を厳密に定義すると、下記のようになります。

①配偶者、必ず相続人

②第1順位、子とその代襲相続人(直系卑属と言います。)

③第2順位、両親等(直系尊属と言います。)

④第3順位、兄弟姉妹とその代襲相続人(遺留分はありません。)

被相続人による遺言書によっても、遺留分の権利は奪うことはできません。遺留分に配慮していない遺言書は、遺留分侵害額請求が優先されます。

・遺留分は法定相続割合の半分。

民法では、遺留分は法定相続割合の半分に指定されています。ただし配偶者や子がいなくて直系尊属だけが相続人の場合は、相続財産の1/3が遺留分となります。

たとえば、相続人が両親だけという場合、相続財産の全てを氏神様に寄付するという遺言書があっても、両親は遺留分の1/3を相続する権利があることになります。

配偶者の法定相続割合:1/2 その半分が遺留分1/4

子の法定相続割合:1/2 その半分が遺留分1/4

子が2人の場合の法定相続割:1/4 その半分が遺留分1/8

配偶者の法定相続割合は常に1/2ですが、子が2人以上いる場合などは、均等に等分します。

遺贈も死因贈与も遺留分侵害額請求の対象となります。

■相続人以外への遺贈は2割加算、生命保険の受取人が孫なら2割加算 。

特別受益以外に生前贈与した財産は、相続開始前1年以内の財産も遺留分侵害額請求の対象に含まれます。また贈与者と受贈者の双方が遺留分侵害となることを知って贈与を行った場合には、1年以上前に行われた贈与も対象となります。

 

◆ 遺留分侵害額請求とは?

以前は、遺留分減殺請求と言っていましたが、2019年の民法改正から「遺留分侵害額請求」という言い方に変わりました。

これは、遺言書などで遺留分を侵害された相続人が、他の相続人に対して遺留分を返還してもらう手続きです。侵害額というように、現金で弁済してもらうことができるようになりました。

ただ侵害額を請求される相続人は、面白くないというか、腹が立つかもしれません。いかに法律で定められた権利が遺留分であるとしても、被相続人の意思であり、請求される相続人にすれば自分が侵害したわけでもないので、納得しがたいところがあるかもしれません。

お互いが納得できなければ訴訟になることもあります。お金も暇もかかりますから、早々に手打ちすることが利巧というものです。

しかしそれが許せないのが、争族たる所以なのだと思います。
遺留分侵害額請求が認められれば、相続の取り分が変わりますから、納税がある場合は何かと込み入る可能性がありそうです。

一番よいのは、やはり遺留分を侵害することがない遺言書を書いておくことが大事なようです。

◆ 遺言書に優先する遺留分。

遺留分を一言で言えば、相続人に認められた法定相続の半分を受取る権利です。相続人であれば、多少親不孝でも出来が悪くても遺留分をもらえる権利があります。

家を出てから盆暮れにも帰ってこない、帰ってくれば金の無心かトラブルのような、寅さんのような人でも遺留分の権利はしっかり守られています。

おいちゃんとおばちゃんの遺産は姪御であるさくらに全部相続させると遺言書で書いても、寅さんは1/4を遺留分として相続できるわけです。

遺言書で財産分けを指定しても、遺留分の権利は侵害することができません。遺言書より優先する権利が遺留分なのですね。

親不孝ものでも遺留分は法的権利と申し上げましたが、遺留分の権利を放棄させることはできないのでしょうか。また出来の悪い身勝手な推定相続人を廃除できるのでしょうか。

■相続で遺留分の放棄をさせることはできるか、その意味と手続き。

どちらも仕組みとしてはありますが、実際的にはハードルが高くとても難しいと言えます。ですから、遺留分は遺言書に優先する最強の権利だとお考え下さい。

◆ 遺留分侵害額請求の時効は1年。

遺留分の権利を主張することができるのは、遺言書で自分の遺留分が侵害されていることを知った日から1年とされています。遺留分の権利を本人が知っていたかどうかは自己申告です。

どうでも言い訳可能ですが、遺留分という制度そのものをしらないと言うケースもあります。

誰も教えなければ権利の主張はできません。しかしずっと後になってから誰かに入れ知恵され、遺留分の権利を主張されるとやっかいです。やはり遺産分割協議で決着させておくべき遺留分です。

相続開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年、留分侵害を知らない場合、相続開始から10年経過すれば時効となります。

兄弟姉妹に遺留分がない件は下記に詳しく書きました。

■兄弟に遺留分がなくても納得できる相続の深い理由。

◆ 遺留分計算の特別受益には時効が10年。

特別受益の持ち戻しには時効がありません。しかし遺留分の計算をする場合、特別受益の持ち戻し範囲は相続発生前の10年に限られます。

「他の相続人に明らかに損害を加えることを意図した生前贈与」は特別受益の持ち戻し時効の対象外ですが、証明することは簡単ではなさそうです。

また特別受益の持ち戻しの免除の意思表示は、遺言書や遺産分割協議では有効ですが、遺留分の計算上は無効となります。

そうなると生前の株価の安い時期に、自社株贈与を後継者一人に集中した場合などにリスクとなります。

自社株贈与の憂いを完全に除去できる「除外合意」や「固定合意」という事業承継のウルトラCもあります。

・除外合意と固定合意は事業承継の最後の砦。

除外合意や固定合意とは、中小企業の事業承継において自社株後継者に贈与する場合、特別受益とみなされてもち戻しになり、遺留分侵害額請求の対象とならないようにする手続きです。

これは、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律のなかの「遺留分に関する民法の特例」によるもので、これは生前の手続きが必要です。

除外合意:先代経営者から後継者に贈与された自社株式や事業用資産を、遺留分算定の基礎財産から除外する制度です。

固定合意:先代経営者から後継者に贈与された自社株式の評価額を合意時の評価額で固定する制度です。

意図せずに遺留分を侵害してしまうような遺言書にならないよう、遺留分に細心の注意を払い、配慮した遺言書が必要な訳です。

・遺留分権利者が先に死亡するとその権利は?

遺留分権利者が時効前に死亡した場合、その権利は二次相続の際に遺留分権利者の相続人(兄弟姉妹を除く)が受け継ぎます。

そのため、一次相続で請求されなかった場合でも、二次相続で遺留分侵害額請求される可能性があるのです。先の例で、父親の相続のときに母親が遺留分を第3者に侵害されていた場合を想定してみましょう。

母親が遺留分侵害額請求をしないまま時効前に死亡した場合、子どもが遺留分の権利を相続します。母親は遺留分請求の意思がなかったとしても、権利を受け継いだ子どもは遺留分侵害額請求をすることができるのです。侵害者は、侵害された当人(この場合は母親)が死亡しても請求を免れるわけではありません。

■相続争いはお金の奪い合い、生前から争族とは悲しい現実。

◆ 遺留分の大問題、まとめ。

財産が少ない家庭ほど相続ではよく揉めるというのは、実際の事例でも統計データからでも明らかです。

遺産というのはよく考えれば形こそいろいろですが、結局はキャッシュと同じことです。遺産分割協議では目の前に一万円札が積み上げてあり、その分捕り合戦をしていると思えば、間違いありません。

たとえば単純に、何の責任も負わずに100万円の札束が棚ぼたでもらえるとしたらこれほどありがたいことはないのです。相続とは金、そういうことですから、簡単に譲歩できないし骨肉の争いにもなるわけです。

■相続での争いは譲れない人間の本性をさらけ出す深い理由。

財産が余るほどあれば、100万ぐらいの現金であれば兄弟喧嘩するくらいなら譲ってしまうかもしれません。しかし生活に困窮していれば、喉から手が出るほど欲しい当座の現金です。

それゆえに相続では迫害され、遺言書では無視されて、法定相続分すらも相続できなかった相続人の最後の砦として遺留分があります。

・すべての人は予定相続人であるし、遺留分がある。

すべての人はいつか相続人になる必然性があります。相続税がかからなくても相続はあります。相続があれば遺留分は額の大小は別にしても必ずどこにもあるわけです。

そしてその相続人に保証されている権利が遺留分だとすれば、これは相続税がかかるかどうかを越えた、相続上の大問題と言えるのではないかと思っています。

他の相続人である子の兄弟姉妹の遺留分に配慮して、遺言書を書けばよいのです。しかし相続で分けるものが、不動産だけという場合や、生命保険による代償分割などの準備ができていない場合は大変です。

住んでいる家は売却できないので、分けられる現金が足りないとやはり争いが泥沼化し、家庭裁判所まで行く例が多いようです。

・相続関連の知識武装が身を守る。

そういう時代だからこそ、被相続人も相続予定者も相続関連の知識で武装しておく必要があります。知っていると知らないとでは、遺産分割協議や遺言書の内容を相続人で確認するときに大きな差が出ます。

相続の知識があれば、専門用語を駆使してその場を押し切ってしまうこともあり得ます。よいか悪いかわかりませんが、時代が相続税のかからないフツーの庶民にまで、遺留分などの専門知識を求めていると言えると思います。

家制度が崩壊し、個人の権利が増大した結果、平等という権利意識が争族を激化させている面があります。田舎では、今でも嫁に出した娘や独立している次男などが相続に口を出すと煙たがられます。

■家督相続から法定相続が招いた家族崩壊。

仲のよい家族、親族でも被相続人たる親が亡くなると抑えが利かなくなり、言いたい放題になることもあります。

今ではネットで検索すれば、相続関連の情報はいくらでも手に入ります。遺留分や生前贈与、特別受益の持ち戻しなどの専門用語も詳しく解説しています。

相続人として主張できる権利を確認できます。また専門の税理士や弁護士を探すことも、ネットで簡単にできる時代です。遺留分の問題もまた争族の火種として拡大していくように思います。

相続に非協力的な相続人の本音と3つの落とし方。

改正電帳法の宥恕措置とは?猶予措置との違い、いつまで。

改正電帳法の宥恕措置とは?猶予措置との違い、いつまで。

改正電帳法(電子帳簿保存法改正)は、2022年1月1日に施行されました。 同法では、電子取引のデータ保存を義務化することになっています。しかし、中小企業などでは対応が難しいため、2022年度の税制改正大綱で、電子取引のデータ保存について2年間の宥恕措置(ゆうじょそち)が設けられました。翌年の2024年1月1日から、電子取引のデータ保存は完全義務化となりました。

■恐怖の質問検査権、税務調査で電帳法改正の狙いが明らかに。

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◆ 猶予措置による改正電帳法の腰砕け。

何とか期限までに間に合わせられるように、税務署と相談しながら対応を進めてきた中小企業では、腰砕けになったところもあるのではないかと思います。

そもそも宥恕措置とは何ぞやです。読み方すらわからない熟語が使われています。学校でも日常でも使わない意味不明の宥恕措置です。普通の人が普通に読めない漢字を組み合わせて、賢ばっている理由がよくわかりません。

■恐怖の質問検査権、税務調査で電帳法改正の狙いが明らかに。

◆ そもそも宥恕とは、何を寛大な心で許すのか。

広辞苑によると宥恕とは「寛大な心で許す」ことだそうです。納税者からすれば単に猶予と言えばわかりやすいところを、ことさらに日常的でない難解な漢字をあてて、勿体付けるのはいかがなものかと思います。

ただですら複雑になって難儀している帳簿保存ルールの電子化なのに「まったく読めない漢字を使うんじゃねぇ!」という感じの気分です。

平たく言えば、電子帳簿保存法改正の最初は、デジタル化に舵を切るために強気一点張りで電子データでなければダメ、認めませんよ!と言ったものの対応できない中小企業や零細企業がかなり多く、反発が強かったため、これまで通り紙で保存してもいいよ?! 但し2年後には電子データにしてね!! ということです。

電子帳簿保存法の改正とは、もともとは国税関係帳簿書類を電子データで保存することを義務付ける法律です。2022年の改正で導入・運用の要件が大幅に緩和され使いやすくなりました。中小企業では到底できもしないがんじがらめの仕組みを緩めて、導入しやすくした分、対応しなければペナルティを課すという法律です。

わかりやすく緩和された点を箇条書きにすると、

・税務署の事前承認は不要となりました。

・適正事務処理要件という無駄な作業がなくなりました。

・タイムスタンプ付与の条件が緩和され、猶予の幅ができました。

・検索要件が緩和され、年月日・金額・取引先の3条件に削減されました。

・できなければ、青色申告取り消しペナルティの対象になります。

簡単に改正電子帳簿保存法の要点を簡潔にあげておきます。

①電子取引データ保存→2024年1月1日から完全義務化。

②国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存。→任意

③紙ベースの取引データのスキャナ保存。→任意

①の電子取引データとは、メール添付の請求書やWebからダウンロードした領収書など、電子データとして受領した書類はデータとして保存することを意味します。プリントアウトして保存することは認めませんというわけです。

②の国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存は、義務ではなく任意ですが、会計ソフトなどを導入していれば、ほぼ問題なく対応できていると思います。会計ソフトはお金がかかるからエクセルで対応していますと言う場合、細かいルールがありますので、ここでは触れませんが注意が必要です。そもそも会社法では、会計帳簿を適正に保存していないと100万円の過料という罰金が科されます。

③請求書や領収書は紙ベースで受領することもあります。これをスキャナでPDF化して、電子データとして保存しなさいと言うことです。しかしこれも任意となりました。しかし紙ベースで揃えるか、PDFにまとめて検索できるようにしておかないと、管理する方も大変ですね。

◆ 国税庁のFAQから見える読み違い。

日本の多くの企業は中小企業であり、全企業の99.7%を占めています。

さらにその中小企業の内、より零細な小規模事業者が約85%と、とにかく細かいのです。

予算も人手も知識もない、労働生産性の向上だとかDXだとか言ってもそもそも無理というレベルが大半を占めています。

ある資料によると中小企業の中央値は従業員数3人、売上は6,790万、経常利益は160万、総資産5,420万、資本金は510万とおどろくほどに日本の中小企業は規模の小さい事業者がほとんどなのです。

大半の中小企業が50人以下、というより50人近くも従業員がいればそこそこの中規模企業というべきです。従業員数が一桁というような零細企業に対して、青色申告のメリットを取り消すぞと脅してもそう簡単に変われるものではないのです。

電子帳簿保存法改正は、実態が把握できていないことによる国税庁の読み違いというより、そもそも勇み足であり無理筋だったと言えなくもありません。

国税庁のFAQに追加された解説に以下のようなものがあります。

Q:当面、電子取引の取引情報に係る電子データ保存への対応が間に合いませんが、どのような対応をすればいいでしょうか。

(参考)
A:この宥恕措置の適用にあたっては、保存要件に従って保存をすることができなかったことに関するやむを得ない事情を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを、具体的でなくても結構ですので適宜お知らせいただければ差し支えありません。

文言的には、若干脅されているように感じると思いますが、やむを得ない事情とはなにか?具体的には何も書かれていません。要するに、現在の対応状況と今後の見通しが説明できれば、問題ないとい解釈で大丈夫のようです。

■中小企業の経営課題はその日暮らし、体験を側近が語ると泥縄経営。

◆ 2年の宥恕措置の難解な意味は、まとめ。

そもそも、宥恕とは法律用語です。直接的な意味では寛大な心で罪を許すことです。別に何の罪も犯したわけではないのに宥恕とは、これ如何に!と言わざるを得ません。

実際は、それなりの会計ソフトを導入しクラウドでデータ管理をしていれば、改正電帳法には概ね対応できるはずです。しかしそれにも対応できていない零細企業はたくさんあるということです。

調査によると実際に改正電帳法に対応できている企業は、最初の頃わずかに16.4%に留まっていたようです。しかし宥恕措置の効果かどうかわかりませんが、今では電帳法改正で義務化された電子取引の電子保存へ対応している企業は8割強に上ったようです。さらに6割近くの企業では、スキャナ保存まで対応済みであるそうです。

税務署ににらまれてもあとあと困りますから、改正電帳法に従った運用の導入を検討している企業も少なからずあったかと思いますが、宥恕措置により一旦熱が冷めて仕切り直しになった感は否めません。

宥恕措置の期間が経過後も、電子データの保存義務化に対して、対応できない企業に、さらなる猶予措置が認められることになりました。この猶予措置には相当の理由と、税務署長の承認が必要です。

・宥恕措置のあとに猶予措置を予定?

猶予措置の期限は未定ですので、完全義務化を謳ったものの、実情はそれほど単純ではなかったと言うことかと思います。最初から、宥恕措置のあとさらに猶予措置の予定があったのかもしれないと勘繰りたくなるところです。

電子取引データ保存というのは、質量がありませんから頼りない感じがするのは年のせいでしょうか。クラウドと言えども人為的なシステムです。紙で保存している場合の火災による消失リスクはなくなるかもしれませんが、デジタルデータを妄信するのではなく、少なくともバックアップは二重にとっておいたほうが安全です。

経営者は自分のリスクが理解できない本当の理由がアブナイ。

老老介護と老老相続、複雑化する高齢化時代の生き方。

老老介護と老老相続、複雑化する高齢化時代の生き方。

老老介護は検索でも多数ヒットしますので、社会的に認知されてきた言葉です。しかし老老相続とは、まだ認知されていない4字熟語です。

検索数でも5倍の開きがあります。老老相続とは、聞いたことがない方の方が多いと思います。検索予測ツールでも老老相続では、データがありませんと突き放されます。

しかし、それほど軽い問題ではないところが、老老相続の根が深いところです。老老介護であれば、その先に確実に待ち受けているのは老老相続です。

厚生労働省の調べによると、在宅介護で要介護者と介護者が共に75歳以上の世帯が29%、共に65歳以上の世帯が51.2%もいます。つまり、在宅介護の半数は老老介護であり老老相続の予備軍と言えると思います。

■介護は不公平、相続は公平では納得できない相続人の不公平。

■老後の相続対策は相続税がかからなくても必要な理由。

◆ 老老介護とは?老老相続とは?

言葉的に読めば何となく、高齢化に伴う社会問題であることは推測できます。「老」という漢字が意味していることは、65歳以上が高齢者であると言うことです。

65歳が老人かどうかは、実感として異論があります。でも、少なくとも体力の衰えはありますし、年金受給の開始年齢でもあります。

その65歳以上の高齢者が介護する人であれば、普通は介護される人はさらに高齢であると思われます。そういう場合、両方が65歳以上の高齢者ですから、この場合に老老介護となります。

また同様に高齢者同士の相続も、老老相続というわけです。高齢者イコール老人という図式は成り立たない時代です。しかしそれでも老老介護にしても、老老相続にてしも、高齢なるがゆえに様々な問題が発生します。

社会の高齢化は、今後ますます進展することは避けられません。長寿社会の問題として高齢者だけでなく、社会全体で対応策を模索していく必要があります。

老老相続とは、まさに相続の現場でも同様に問題が起きているのです。最大のネックは、老老双方に認知症にリスクが高まっているということがあります。

相続対策の最大の敵は、やはり認知症でしょう。そういう意味では、老老相続で考えるべきことは、どのような相続対策あるいは相続税対策を行うにしても、認知症対策は前提条件として考えておかなくてはなりません。

■認知症による年金口座凍結を回避するウラ技。

◆ 老老相続が日本経済の成長の障害。

老老時代が加速すれば、老後資金はますます必要になります。一説には2,000万円の貯蓄が必要であるという話題がありました。物価高と長生きリスクを考えると、資金がいくらあっても不安が消えるということはありません。

老老介護になっても、結局ものを言うのはお金です。老老相続になると財産が消費にまわらず老後資金としてため込まれます。そのため日本の経済成長には、マイナスの影響があるという意見もありますが、そうとばかりも言えません、

老老介護と老老相続が同居する時代では、介護費用で破産することすらあり得ます。相続するどころか、現在の生活もままならないという事態も想定しておかなくてはなりません。

相当の資産家で相続税が大枚かかるような方は、そもそもがケチであり生前贈与などの節税策もぬかりなく進めています。老老相続になっても、あまりあわてることはないかもしれません。

しかしながら相続税の基礎控除の引き下げで、にわかに相続対策が必要になったような老老相続では大変です。

驚くような資産があるわけではなく、自宅を含む不動産といくばくかの現金があるだけでも、相続税がかかるという方も多くいらっしゃいます。

老老相続は、自分で選んだ結果ではないと思います。老後の生活資金に少しでも余裕を残したいと思うと、あわてて生前贈与もできないというのが老ゆく者の本音です。

■介護離職か介護放棄か!やせ我慢と無知が招く介護破産の危機。

◆老老介護と老老相続、その後のまとめ。

悪乗りとも思えませんが「老老老介護」だとか「認認介護」、また「若若介護」などという熟語もあるくらいですから、問題がより深刻になっていく可能性が高いと言えます。老老相続とか老老介護ということから得られるイメージは、決して明るいものではありません。

しかし人間は如何に老いようとも、死ぬまで生きなければなりません。死期は自分で決められるものではなく、神のみぞ知る選択肢なのです。

心豊かな老後などと、きれいごとを言っても始まりません。できる限り老後の資金プランを具体化し、体を動かせることに感謝することです。縁ある方にお礼を申し上げる心持ちがあれば、道は自ずと開かれます。

辛(つら)いことにお礼を言うくらいの謙虚さ、悲しいことにお礼を言うくらいの優しさ、苦しいことにお礼を言うくらいの感謝の気持ちが、老老時代には何よりの財産になるように思います。

おひとりさま相続とおふたりさま相続、遺言書が絶対必要な理由。

子がないと被相続人の兄弟に相続権、遺言書がないと嫁の悲劇。