節税保険、バレンタインショックまとめ。

節税保険の全盛から壊滅まで、バレンタインショックまとめ。

法人で契約する保険の目的には、事業保障と節税という面があります。節税という保険本来の目的を逸脱した販売合戦が過熱し、業を煮やした国税庁が大ナタを振るいました。2019年2月14日、日本経済新聞の「節税保険」販売停止という記事から始まったバレンタインショックは、節税保険をほぼ壊滅に追い込みました。

保険を買う側で、バレンタインショックに始まる一連の経緯をまとめました。当時の保険会社や保険代理店の対応が、つぶさにわかる記事になっています。買う側の中小企業の立場で書いていますので、利益の繰り延べに使える節税保険という選択肢を失ったことで、多少批判的な記事になっています。

◆ 節税保険の駆け込み競争。

バレンタインショック以前は、10社程度の保険会社が「傷害保障重点期間設定型長期定期保険」なるものを競って販売を始めました。呼び名はさまざまですが、契約成立から数年間は通常の病気死亡の保障がなく、傷害事故の死亡保障だけになっている定期保険です。

付加保険料を上乗せし、解約返戻率をギリギリまで高めた節税目的の保険です。したがって、初期の期間では病気死亡保障がありませんから、告知も単純で診査もない会社がほとんどでした。

各社の販売合戦が加熱し、ついに国税庁が待ったをかけたのが2月14日です。ゆえにバレンタインショックと呼ばれることがあります。

それから紆余曲折を経てパブリックコメントが4月11日に募集され、6月28日の通達発遣となりました。パブリックコメントで示された内容は、保険料の損金計上に厳しい共通のルールをもうけるというものでした。これにより抜け道がふさがれて、節税効果がある保険を一網打尽にする強硬な内容でした。

法人保険を買う側からみた、一連の節税保険販売停止に至るまでのバレンタインショックをさかのぼりの時系列で新しい方の記事から降順でまとめました。

■保険会社の決算間近、バレンタインショック破綻への序章。
2020年2月16日

バレンタインショックから1年、保険業界の厳しい状況、駆け込み契約した大量の節税保険の管理と出口対策をまとめました。

バレンタインショック関連記事の最終号です。保険営業で生き残ることができるのか、別の道を探るという選択肢も検討すべきか問題提起。

■節税保険壊滅、令和元年の悲劇しめくくり。
2019年12月22日

平成から令和へ、保険業界最悪の一年を振り返ります。この先、保険営業として生き残りの秘策を伝授できるか。

結局、一括千金の節税保険はもはや夢物語、外車から国産車に乗り換えて真面目にコツコツ、信用を積み上げて契約につなげるしか道はなさそうです。

■バレンタインショック後遺症に苦しむ保険業界。
2019年9月22日

バレンタインショックの強権規制で、売るものがなくなった保険営業と保険代理店の苦境と後遺症についてのまとめ。

果たして保障性の保険商品や個人への販売で生き残る道はあるのでしょうか。それともバレンタインボーナスが退職金になってしまうのか。保険業界の先行きを憂います。

■バレンタインショック後の意味不明な提案書と買う側の憤り。
2019年7月21日

提案書には「課税タイミングが変わる課税の繰り延べに過ぎず、原則、節税効果はありません。」節税効果がないと言うなら販売しても問題はないはず。

バレンタインショック直後の保険業界の動きと、節税保険を封じらた中小企業の資金運用の痛手についてあれやこれやの憤りの記録です。

■国税庁のトドメ通達で節税保険ついに全滅か。
2019年6月30日

今回の国税庁の通達は、まさにトドメと言うべき厳しい内容でした。しかし既契約への遡及適用はなしと言うことで、一応安堵しました。

予想に違わず短期払い医療保険も道連れになりましたが、3ヶ月の猶予期間が設けられました。

国税庁は保険会社に販売停止を命じる権限はないとしながらも、ルートを変えて保険業界に圧力をかけ続けています。

■週刊ダイヤモンドとバレンタインショック。
2019年6月16日

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週刊ダイヤモンドが、バレンタインショックの特集を組みました。背景の事情や金融庁長官のインタビューが載っています。

国税庁の裏舞台のドタバタの経緯と、金融庁長官のピンボケインタビューが印象的でした。

■バレンタインショックの生き残りになるか逓増定期の名義変更。
2019.6.9

バレンタインショックの言い出しっぺは?通達が発遣されるまでの、国税庁のもたつきの原因は?

最後に残るか、逓増定期の名義変更は?先が見えない中での情報収集のまとめ記事と保険営業への辛口アドバイスです。

■バレンタインショック、通達が出るまでの駆け込みがん保険。
2019年6月2日

通達が出るまでに、ずいぶん間があきました。駆け込みで、短期払いの医療保険やがん保険を売り込んできた代理店も、動きがなくなりました。もはや打つ手がなく、ひたすら通達の発遣を待つだけとなりました。

3月決算企業、4月決算企業が加入した節税保険は、全額損金で処理をしています。通達が出て遡及となれば、決算修正を余儀なくされるかもしれません。

■短期払医療保険がバレンタインショックの道連れか。
2019年5月19日

呼び出された保険会社の幹部からもたらされた情報は、短期払いの医療保険も節税目的であるとして、バレンタインショックの道連れになりそうな情報が走ります。

各社あわてて短期払い医療保険の駆け込み販売に、追い込みをかけます。確かにイタチごっこではありますが、通達がでて方向性がみえないことには、保険代理店も保険営業も開店休業状態です。

■節税保険の実質返戻率から見える保険業界の末路。
2019年4月28日

パブリックコメントで示された資産計上に関する新ルールを読み解くと、実質返戻率が100%越える商品はほぼなくなり、メリットが半減します。これは国税庁もやり過ぎかと思いますが、抵抗することもできません。

手をこまねいて、保険業界の末路をみるような思いです。残り商品は短期払いの医療保険か、ハーフタックスの養老保険かと言うことになります。

■節税保険、国税庁のパブコメでトドメか?
2019年4月14日

ようやくにして国税庁が発表したパブリックコメントは、既契約遡及の見送りによる一様の安堵感と、節税保険一網打尽の新ルールに驚愕することになりました。いまだに理解不能な新ルールは、経理処理の複雑化が避けがたくなりました。

節税保険を主力にしてきた保険会社や保険代理店は、今後の法人保険市場での販売機会を大きく失うことになります。新ルールに従えば、法人保険市場の関係者は、計り知れないダメージを受ける可能性があると言うことです。

■節税保険販売停止の無策、国税庁の暴走!
2019年3月31日

国税庁の動きがない中、不安が増幅しているところです。法人保険販売の関係者は、パブリックコメントの内容を予測し、国税庁と金融庁の対応に不満を募らせています。

国税庁の方も国税OBやら業界からの陳情や圧力に苦慮しながら、方向性を模索している時期だと思います。一番の懸念事項は、既契約に遡及があるかないかです。

■節税保険、バレンタインショックの行く末!?
2019年3月17日

バレンタインショックから一ヶ月の不安定な時期です。国税庁からはパブリックコメントも出ないし、保険募集人は販売停止で動きがとれません。

そぞろ保険業界の先行きに、大きな不安を感じはじめているころです。できることはなく、パブリックコメントを待つよりほかにありません。

■節税保険、自粛か、販売停止か、売り放題か。
2019年2月17日

2月14日の日本経済新聞に掲載された記事から、各社一気に販売停止、販売自粛に切り替えました。しかし数社は最後の追い込みをかけ、2月末までに莫大な契約を駆け込みました。国税庁の通達の結果、経理処理のルールが変わっても責任は持ちませんよと言う念書付きの契約です。

結局、既得権に遡及なしとなり、全損で節税保険に駆け込んだ企業も保険会社も保険代理店もおとがめなしで丸儲けとなりました。

■全損節税保険の駆け込みラストチャンス。
2018年12月9日

駆け込みラストチャンスと言いながらも、迫り来る黒い影を感じている時期です。保険会社も保険代理店もこれはやり過ぎと思っていても、千載一遇のビッグチャンスでもありますから、手をこまねいていることはできないところです。

しかし、多くの保険会社は、節税保険に走らず適正な販売活動を行っていましたが、歯がゆい思いであったと推測しています。まさかそのあおりで、普通の半損処理が可能な長期平準定期まで巻き添えを食うとは考えていなかったと思います。気の毒としか言い様がありません。

■国税庁、網がかかるか全損保険。
2018年7月8日

この頃から怪しい噂がささやかれていました。全損の節税保険の乱売合戦に突入して、節税保険の選択肢も広がりましたが、いろんな代理店やら銀行筋からアプローチがありました。

もし網がかかるようなことがあれば、いよいよ最後のチャンスというセールストークがまかり通っていました。節税保険バブルに便乗して、新商品販売を狙っている保険会社も数社ありました。

■全額損金の返戻率ではネオファースト生命。
2018年3月11日

仕掛けはニッセイのプラチナフェニックスという定期保険です。その後各社同様の保険商品を発売しますが、どの代理店も必ず提案してきたのがネオファースト生命の定期保険でした。

気の毒なのは第一生命の子会社なのに、第一生命の営業職員は販売できないのです。確かに解約返戻率はよかったですね。ただピーク時の解約返戻率が高いとピーク過ぎの解約返戻率が急降下する傾向があります。

◆ 保険営業の行き詰まりで既契約のフォローが曖昧に。

今回の国税庁が発遣した通達の影響をもっとも受けるのは、法人をターゲットにした節税保険を主力に販売してきた保険代理店です。大きな成果を出す保険営業ほど、得意分野に特化した専門的な営業スタイルをもっています。節税優先的な考え方の取引先も多いので、販売戦術の転換が難しいのです。

一旗揚げた後にはドツボが待っていたというようなことになると、保険業界での生き残りは難しくなると考えられます。その結果影響を受けるのは、節税保険に大金を突っ込んで、とりあえず利益の繰り延べをした契約者である中小企業です。

節税保険で大事なことは、徹底した解約時期の管理と出口対策です。今回の通達の影響で保険代理店の廃業や縮小が進めば、この解約管理のフォローを引き継ぐことができなくなる恐れがあります。

保険によっては解約返戻率のピーク時が、10年後というような保険商品も多かったと思います。解約すべきときには、販売した代理店の担当者も契約した法人の担当者も退職してしまって、責任ある管理者がいないというようなリスクが想定されます。

経営者自身が自己責任で解約時期の範囲を確認し、中長期の事業戦略における投資時期や資金需要を見定めてください。解約返戻率のピークにこだわらず、早めの解約設計をされことが得策かと思います。

■節税保険の出口対策、バレンタインショックの駆け込み保険が危ない。

◆ 販売競争の結果、告知義務違反が急増。

今回の節税保険の販売合戦の問題点は、何でもありで保険販売のモラル軽視の販売スタイルがみられたことです。これは残念ながら外資系も国内生保も同様でした。

節税のため加入優先であり、保険料を増やす、あるいは解約返戻率を高くするためには、不告知教唆も辞さないようなアドバイスもありました。

確かに解約返戻金を目的としており、死亡保険金を目的としていないのですから、告知義務が軽視されるのは避けがたい流れです。しかし保険販売では、越えてはいけない一線があります。

運悪く死亡事故があっても保険金請求をせず。予定どおり解約返戻金で満足すれば何の問題にもなりません。でも告知義務違反を忘れて保険金請求をすると、事態は深刻になります。まだこれからではあると思いますが、この種の問題は徐々に増加すると思います。

意図的に重大疾病の履歴を告げないような告知義務違反は、重大な告知義務違反に当たります。給付金や保険金は支払われませんが、解約返戻金は支払われるケースがあります。

解約返戻金さえ受け取れるなら、告知義務違反による保険会社の解除権は気にする必要はないのかもしれません。しかし解約返戻率の低い時期にこれをやると大損します。ご注意を。

■節税保険の行き詰りに、無駄遣いより納税が利口な理由。

◆ 経理処理が複雑化、理解不能に。

これまでで保険の経理処理は、十分複雑化し理解不能に近づいていましたが、今回の通達は完全に理解不能ゾーンに突入した感があります。

これまでの長期平準定期保険の既契約は、いわゆる105歳ルールです。保険期間満了時の被保険者の年齢が70歳超で、かつ契約年齢+保険期間(年数)×2>105の場合に保険期間の6割の期間で半分損金処理ができました。

解約返戻率のピーク時期前後で解約しますから、実務的には解約時以外に保険積立てを取り崩すような経理処理はないのが普通です。

しかし今回の通達では最高解約返戻率により損金算入割合が異なり、資産計上した部分の取り崩し時期も4割の期間経過後(最高解約返戻率85%超はさらに複雑)などとなっており、そんな経理処理を正しく行えるものでしょうか。

保険との付き合いは長期になります。最初の契約条件など覚えているものではありません。今後は新たに発売される保険にもよりますが、保険会社が経理処理を管理し案内するような仕組みを強化する必要があります。

■節税保険、簿外資金の使い道。

◆ 解約後、出口対策用のフォロー保険がない事態に。

これまでは解約時の雑収入の使い道も保険代理店に相談し、引き継ぐ保険提案を求めていたものです。経営ですから利益が出たり出なかったり、うまく損金材料が揃うとも限りません。

そのときの雑収入の受け皿として損金保険があったものですが、その手は使えなくなりました。今回大量に契約された全額損金の節税保険は、出口対策用としてフォローする保険がない事態に陥ります。

よほど中長期の投資計画や利益管理をしっかり行わないと、思いがけない雑収入から予定外の納税をすることになりかねません。

解約返戻金として簿外のキャッシュは、緊急予備資金としての意味があります。まだ時間がありますからできれば、簿外資金の有効活用を今からお考えいただくことが肝要かと考えます。

◆ 駆け込み販売合戦にならなかった本当の理由。

今回の通達は、即日適用とはなりませんでした。ならば7月5日(金)(短期払い医療保険は10月7日まで)までは、全損保険や短期払い医療保険の販売合戦が展開されると思っていましたが、そうはなりませんでした。相変わらず保険会社は販売停止したままなのです。

国税庁がパブコメの回答に「国税庁において、各生命保険会社に対して保険商品 の販売停止を求めた事実はありません。また、税の執行機関である国税庁は、各生命保険会社に対し、保険商品の販売に関する指導等をする立場にはありません。」と言い切っているにもかかわらず保険会社の動きはありませんでした。どういうわけか、この間保険会社の営業も保険代理店も営業をかけてきません。一社だけ養老保険の提案があったくらいで、保険業界としては不気味な音なしの構えです。

念のため銀行系の保険代店に、それとなく確認を入れてみたところ、どうも国税庁にかぶれた金融庁の締め付けのようですね。縦割り行政の弊害などと申し上げきましたが、ここに来て連携がとれてきたと言うことのようです。

金融庁が監督する保険会社に、保険販売のコンプライアンスとモラル重視を指導するのは当然です。しかし、当然想定される節税話法の禁止や実質返戻率の表記削除などは、保険販売の現場では効果がそれほど期待できるとも思えません。

それより売るべき保険商品が見えてこないという難渋は、間違いなく保険業界の停滞を招き中小企業の選択肢を奪うことになります。

■節税保険、解約逸機の恐怖。

◆ バレンタインショックまとめのまとめ。

この間の記事に関しては読者が保険業界の方、もしくは法人保険の契約者である中小企業のオーナー経営者および保険事務担当者ということを意識し書いてきました。

このため、専門用語や保険独特の複雑な仕組みやルールは、その都度解説していません。保険に関心がある一般の読者には、わかりにくい内容になり申し訳なく思っています。

ずるずると国税庁の通達が伸びてしまい情報が錯綜する中、保険業界に対する過去に経験のない締め付けが国税庁より通達として示されました。業界の事情を知るものとしてこれは、相当な激震と言えると思います。既契約遡及がなかったからソフトランディングなどと考えるのは、大きな勘違いだと思います。

この結果、保険会社や保険代理店が、ビジネスをどのように立て直すか見守るよりありません。国家権力に対して保険業界は、後ろめたさから戦々恐々の従順さをもって対応しました。噛みついたのは国税庁ですが、金融庁という許認可権限を持つ官庁を敵に回すことを保険業界は恐れたものと思います。

確かに今回の節税保険バブルは、買う側からみても行き過ぎでした。しかし保険業界には抜け駆けこそありましたが、自浄機能がありませんでしたから、ある程度やむを得ない結末と言えるかもしれません。

ただ、いつの時点でも保険販売の現場には、保険募集人として保険営業と保険代理店、そして顧客としての契約者があります。生活をかけて保険販売の取り組む保険募集人と経営の舵取りに腐心している経営者の声が、完全に置き去りにされました。そのことは声高に特筆すべきことであると認識しています。

いろいろ失礼なことも書きましたが、この場をお借りしてお詫び申し上げます。また未熟さから解釈の誤り等も散見されるかもしれませんが、お気づきの点がございましたらご教示賜りますようお願い申し上げます。

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OB税理士に節税を相談できるか?不思議な関係を暴露。

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「節税保険、バレンタインショックまとめ。」への34件のフィードバック

  1. ピンバック: どうなる逓増定期の名義変更、ホワイトデーショックの保険業界。 – 保険は相談するな!

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