暦年贈与の全面廃止は保険営業を直撃するか?

暦年贈与の全面廃止は保険営業を直撃するか?

2022年度の税制改正大綱では、暦年贈与で使われる贈与税の年間非課税枠110万円が廃止される可能性について取りざたされていましたが、「本格的な検討」という文言だけで具体化は見送られました。

しかしこれが見直しされると相続税対策として生前贈与を考えている資産家だけでなく、暦年贈与話法で節税メリットを売り込んできた保険業界や不動産業界などでは大きな影響がありそうです。

2023年度の税制改正大綱でどのような改正を打ち出してくる可能性があるのか、今からできることは何か、生前贈与に網をかける税制の大改革を庶民視点で分析してみました。

◆ 暦年贈与の全面廃止、相続税と贈与税の一体化の目的は?

暦年贈与の全面廃止とは、年間110万円まで認められている暦年贈与の非課税枠が廃止されるかもしれないという意味です。税制改正大綱では「今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税を一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討をすすめる。」と小難しく言っています。

要するに今の贈与に関する税制は資産家に有利だから富の再配分という視点で、公平性に向けて外国の真似をして相続税と贈与税を一体化するというわけです。そのためには暦年贈与の非課税枠110万円を廃止して相続時精算課税制度のように相続のときに贈与はまとめて課税しますと言うことです。

ただ、資産家だけが影響を受けるわけではなく、相続税の基礎控除が下がったおかげで庶民のなかでも、相続税のボーダーラインにいる小金持ちに影響が大きいと考えられます。確かに資産家と庶民との格差を縮小するという目的にはかなっていると思いますが、保険業界に限らず難しい問題が山積していると思いますのでそう簡単にできるとも思えません。

◆ 相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す。

今回の見直しで予測されるパターンは、贈与の非課税枠の廃止により相続税と贈与税を一体化して相続時にまとめて課税する相続時精算課税方式と生前贈与のもち戻し期間を現在の3年から5年か7年に延長する方式が考えられます。

もち戻し延長方式は段階的な手法であって最終の目指しているところは米国方式の無期限もち戻し方式ではないかと思います。

無期限もち戻し方式とは、まさに相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直し、相続時精算課税方式に一本化するということではないかと思います。これにより生前贈与による節税効果はほぼなくなります。

相続時精算課税制度を強制的に適用しさえすれば、相続税と贈与税の一体化は自動的にできることになります。ただ相続時精算課税制度をそのまま適用することは無理がありますから、仕組みとしての調整は必要になります。2500万の非課税枠も2割の贈与税の仮納税も見直して、新しい形での相続時精算課税制度になろうかと思います。従来の相続時精算課税制度をそのまま残し、別枠で相続時贈与税清算制度を導入するかその辺はわかりませんが、最終的な形としては暦年課税制度が相続時精算課税制度に一本化される可能性があるというわけです。

◆ 暦年贈与話法が使えなくなると贈与税を覚悟した保険料贈与。

最も影響を受けるのは先に書いた通り、相続財産が基礎控除ぎりぎりの庶民世帯ですが、それにも増して生命保険業界の影響は甚大だと思います。もし暦年贈与が改正されれば、保険料を毎年非課税の範囲で贈与して生命保険契約を締結するスキームが節税効果というセールスポイントを失います。さらにはこの改正では既契約に影響があることは避けられません。

非課税のつもりで贈与している保険料が将来的に相続税の課税対象とされますから、話が違うということになりそうです。

暦年贈与で相続税がかからないレベルまで親の財産を減らす節税対策がとん挫してしまいます。かと言って生命保険は途中解約をすれば解約返戻金が少なくなり損失が発生することがほとんどです。相続税を覚悟して生命保険を継続するよりなさそうですが、トホホの結末になります。保険を売る側の営業も節税策として、保険をおススメすることができなくなりますから今後は戦術転換が必要になります。

◆ 狙いは最後の砦、生命保険の非課税枠500万か?

今回の税制改正の方向性に限らず、国家の税収を増加させる方針がより鮮明になってきた結果だと思います。

バレンタインショックに始まる一連の保険業界への締め付けは国税庁の意向ですが、その流れと暦年贈与の全面廃止は同じ根にあると言えるのではないでしょうか。

危惧すべきは、その先に見えている、生命保険の死亡保険金の相続時の非課税枠の500万の見直しです。生命保険業界が死守したい最後の砦が生命保険の非課税枠500万だと思います。自民党の税制調査会と言う組織は、国税庁や金融庁とは立場か違いますから、国政選挙が近づくと業界団体に配慮する傾向はあると思います。

それにしても、生命保険の非課税枠500万が見直されるとなれば、保険業界は言うに及ばす、相続税のボーダーラインにいる庶民が一気に相続税対策に巻き込まれてしまう可能性があります。生命保険の非課税枠500万がなくなるという可能性を論じているだけですから、相続をお急ぎになるような早とちりなどなさらないようにお願いしておきます。

◆ できることは最後の駆け込み生前贈与。

贈与の線引きはとても難しいことになりそうです。家族の必要経費か、あるいは扶養の範囲はどこまでかという、さすがに見解の相違が山盛り予想されます。また贈与記録の長期保存をどうするかという問題もあります。

贈与税の基礎控除を廃止して教育資金・住宅取得資金・結婚・出産・育児資金の一括非課税贈与が残ることはないと考えられます。まさか遡及はしないと思いますから、最後の駆け込みは価値があるかもしれません。

節税対策として今後は不動産投資に傾倒する可能性があり、目立たないように現金バラマキ贈与、扶養などの必要経費を大目に見ていくしか手はなさそうです。そうなると医療費控除のように、一定額以上の場合に支払先がわかる領収書保存義務が出てくるかもしれないですね。

実施時期は決まっていませんが、これだけコロナとウクライナに資金をつぎ込むと税収が厳しくなりますから、それほど遠くない時期と推測されます。2023年度税制改正大綱で方向性が示されれば、最短で2024年1月1日から実施ということもあり得ます。とすれば2022年と2023年は最後の駆け込み期間になりますから、相続税を払う可能性がある方は、少々贈与税を払うことになっても、できるだけ多く贈与するに越したことはありません。

◆ 暦年贈与廃止が保険営業を直撃、まとめ。

社会通念上相当と認められる費用というあいまい表現を具体化すると、教育費、扶養にかかる費用、香典、お年玉など普通に暮らしていれば通常必要とされるものは贈与税の対象ではありません。

ですが、この線引きは、資産家と庶民ではかなり見解の相違に個人差があると思います。子供にベンツを買うのは普通という家庭もあれば、原付バイクでも特別な贈与になる家庭もあります。

また相続・贈与の一体化にする前の経過的な措置として持ち戻し期間が延長になれば、当人たちが、自分たちでしっかりと忘れないように、贈与額を管理する必要があります。これも面倒で、ついつい領収書は捨ててしまいそうです。

現行では、生前贈与の3年内もち戻し加算ルールが存在します。これは、生前贈与をしてから3年以内に亡くなった場合、相続税の計算上3年以内に贈与した財産も加算して相続税を計算するという、駆け込み贈与は許しませんよと言うルールです。これは相続人以外の孫やひ孫には適用されないので、先行き危ない時の駆け込み贈与は孫にすれば、もち戻しはありませんが、これはもち戻し期間の延長ということにでもならば、許されませんから贈与による持ち戻しの対象に孫やひ孫が含まれるように改正することは間違いないと思います。

相続・贈与一体化の狙いは、お金持ちの高齢者世帯の資産を若い世代へ移行させて消費を活性化することで景気回復を目指すことにあります。果たしてそううまくいくかどうかはわかりませんが、抜け道がなければかえって停滞するような気さえします。

相続時精算課税制度に移行するというのであれば、贈与するのは現金に限らず、将来的に評価額が上がりそうな不動産や株式ということは考えられます。また贈与した物件が利益を生み続けるような賃貸物件の贈与も有効な手法かと思います。

何にしても見かけ以上に影響が大きいことは間違いありません。ただ相続税がかからない方であれば110万以下ということは関係がなくなり、自由に贈与しても最後に相続税がかからなければ贈与税のことを気にかける必要がありません。うれしいような貧しいような気分です。

おひとりさま時代の生命保険の考え方のツボを明快に。

人生ではどのような展開で、おひとりさまと呼ばれる状態になるかもしれません。

配偶者が親の介護で実家に帰ってしまうと、男やもめのようなシングル感を経験します。毎日の食事は主にコンビニ弁当となります。週末は外出が億劫になり、洗濯と掃除に追われることになります。

アルコールの量が増えて、見張りがいませんからお昼から飲み始めます。リキュール類が発泡酒になり、いつしかビールを箱買いし、一升瓶は大吟醸ヘと変化します。

そういう個人的な話はさておき、おひとりさまという言葉の定義が明らかでないと、保険設計はできません。ところがこのおひとりさまという言葉は、意外に多彩に使われているようです。

単に一人暮らしの人という意味で使用しても、保険設計の条件としては、不十分なことになります。保険設計を考える場合、保障を必要とする人がいるかどうかがポイントです。おひとりさま自身に、どのような保障が必要なのかということを精査しないと、保険が設計できないからなのです。

■フツーに利用できない生命保険契約照会制度。

◆ おひとりさまとは何者か?シチュエーションで変わる定義。

飲食店に一人で入店すると「お一人様ですか?」と問われます。未婚か配偶者離別の一人暮らしでも、おひとりさまです。自分のことを言う場合は「ひとりもん」と言います。

天涯孤独で身寄りがいない人を、おひとりさまということがあります。婚期を逸した生涯独身女性を指して、おひとりさまということがあります。

単身赴任のような場合も、疑似おひとりさまと言えると思いますが、保険的には意味合いが異なります。

終活でのおひとりさまは、ある程度お年を召され配偶者に先立たれて一人暮らしの方を意味するようです。

おひとりさまとは単純に言えば、同居する人がいない状態のことをいいます。しかし保険設計を考える場合は、それだけではなく、自分以外の誰かに保険金を残す必要がない方です。

それならばおひとりさまに、保険はいらないかもしれません。でもケガや病気、認知症などに備えて医療保険に加入するという選択肢があります。

日本には公的な保険制度が充実していますから、医療費で破産することは少ないかもしれません。それでも何度も入退院を繰り返したり、高度先進医療などが必要になったりすると、蓄えは底をついてしまいます。普通に健康であれば元が取れない医療保険ですが、最悪の場合に備えるという意味はありそうです。

■高齢者の生命保険、見直しのタイミングと重要な注意点。

◆ おひとりさま時代の保険リスクと見直しテクニック。

ここで言うところの保険リスクを考えるおひとり様とは、天涯孤独で身寄り無しの方です。さらに頼れる知人・友人なしという、なしなし尽くしの方です。あるいは兄弟姉妹、甥姪などの親族はいるが、疎遠で結局死後事務を託せる人がない方です。

本当の意味でおひとりさまというのは、一人暮らしというだけではありません。頼るべき家族もなく親族は疎遠になり、友人知人はいても死後の整理を託せるほど親しくないという場合です。どのような生命保険が役に立つのか、どのような準備が必要なのかを考えておく必要があります。

■養子縁組と相続の難しさは当事者になるとわかる。

死後の整理を目的として、死後事務委任契約を専門家と契約する場合は、結構な出費を覚悟しなくてはなりません。また葬式代にと考え死亡保険に入るにしても、医療保険に入るにしても先立つものはまずお金です。おひとりさまでも、すべてこの世は金次第とは悲しい話です。しかし、老後資金をしっかり貯めておかないと、死後整理も成り行き任せとなります。

切り詰めて保険で準備できるものを考えると、おひとりさまの場合は簡単な葬式代が必要です。さらにお墓がいらないのであれば、死後整理にかかる費用として、300万程度みておけば大丈夫かもしれません。おひとりさまは、基本的に誰かに保険金を残す必要がありません。ですから余裕があれば医療保険ということもお考え下さい。

・おひとりさまのリスクはがんと認知症。

また、がん保険はできれば入っておくべきです。がんは急性期よりも治癒した後の通院費用が10年以上にわたり大がかりします。運悪くがんにかかったときは、がん保険が経済的な助けになります。

おひとりさまの場合、老後資金が不安な方は、できれば保険にお金をかけるより貯金していただく方が確実です。何があるかわからないまさかの人生ですから、万が一の備えはキャッシュで確保する心掛けが大事かと思います。

おひとりさまで怖いのは認知症です。気を付けてどうにかなるものではありません。しかしおひとり様で認知症になれば、薄れいく記憶と判断力が低下する中で一体、誰を頼ればよいか不安になると思います。そういう場合、お金に余裕があれば専門家に、死後事務委任契約や任意後見をお願いするしかありません。

■生命保険と認知症は相性が最悪である理由。

■がん保険は採算割れ、それでも不要と言えない3つの深刻な理由。

◆ おひとりさまの保険設計、まとめ。

「驕れる者久しからず、ただ春の夜の夢の如し、たけき者もつひには滅びぬ」とは平家物語の出だしの言葉です。これまで地球上の覇者のように権勢を誇ってきた人類も、まもなく人口減少の局面を迎えます。

日本では出生率が下がり続け、その上未婚率が上昇しています。このままでは離別した人や死別した人も含めると、ある統計では2035年には2人に1人がおひとりさまになるとう超シングル時代がやってきます。

生命保険の主要な役割は、あとに残された家族の生活保障です。しかしおひとりさまには、生活保障が必要な家族がいません。

おひとりさまに必要な保障は、ご自分のための医療保障と葬式代(死後整理費用)となりそうです。貯蓄や財産が十分あればそもそもおひとりさまでは、生命保険による保障は必要がありません。

・おひとりさまの長生きリスク。

最後の面倒を見てくれて、死後整理をしてくれるであろうという家族がいれば、安心感があります。しかしこれから先の子や孫の世代では、未婚率は上がり続け、出生率は下がり続けるでしょうから先行きの不安は絶えません。仮に面倒を見てくれる子がいても遠方住まいであったりします。子が一人であったりすると仕事を辞めて帰ってくれば、経済的に共倒れになるリスクすらあり得ます。

■介護離職か介護放棄か!やせ我慢と無知が招く介護破産の危機。

何歳まで生きられるかは誰にもわかりません。しかし還暦・古希・米寿と長寿でめでたくなるどころか、悲劇に近づいていくとは、まったくこんな世に誰がしたと言いたくもなります。身体が動く限り働き、老後の収入を確保し、生活費を始末し、しっかりとした老後資金プランを組むようにしてください。その上で、遺言書を作成するぐらいの知恵と余裕は、残しておきたいところです。

リビング・ニーズ特約とは、わかりそうでわからない不思議な無料特約。

生命保険の残す書類といらない書類、整理と保管期間まとめ。

優良申告法人の税務調査のウラ話、現場のリアルを体験から。

世間にはあまり知られていないと思いますが、優良申告法人の通称は「優良法人」略して「優法」と呼ぶこともあります。優良申告法人は所轄の税務署より過去の納税実績、税務調査の結果に基づき判定されます。希望してもなれるものではないのです。

優良申告法人も税務調査を受けます。しかし以前までは一般の税務調査のように不正を暴くような対応ではなく、実地調査はおざなりの挨拶程度になっていました。税務調査で多少の問題があっても、申告は適正であるとして是認されてきました。

優良申告法人の税務調査は、貴重かつ希少な体験です。そこに居ないと税務署の本音とウラ話がわかりません。現場のリアルを体験からまとめて報告します。

■元国税調査官の自己矛盾を暴くと驚く話が山盛り。

◆ 優良申告法人に実地調査の本音。

ところが平成27年から国税庁の方針が変わったようです。優良申告法人でも実地調査に一日半程度割いて、統括官と上席が総勘定元帳を調べるようになりました。

しかしその5年後の税務調査では、実地の調査ではなく個別指導という名目で、アンケートのようなものを書いて税務署に提出してそれで終わりでした。その後4年間、税務調査はありませんので、一回の税務調査で9年間は優良申告法人という看板を掲げられるわけです。

果たして10年目の税務調査がどの程度踏み込んだ調査になるかはわかりません。たぶん統括官が来て実地調査となると思います。優良申告法人を何十年も継続していると、過去の税務調査で実地調査が行われたという経験がないのでどぎまぎします。

推測になりますが、これまでの感じでは実地調査になっても、決定的なところには踏み込まないという感じがします。

優良申告法人といえども、売り上げ規模が大きくなると様々な問題が起こってきます。経理処理上の見解の相違は、それこそいくらでもあります。たたけばホコリが出るのは、優良申告法人でも普通法人でも同じことなのです。

しかし、税務調査ではホコリが出そうなところはたたかないというか、見解の相違は大目に見るような暗黙の習慣があります。

■国税庁の密告サイトは、タレコミがバレない陰険な訳。

◆ そもそも優良申告法人の資格は?

優良申告法人として税務署から表敬状を受け取ることができるのは、全法人のわずかに1%程度と言われており極めて貴重な資格なのです。

表敬となると所轄の税務署長が来社され、表敬状の授与と記念撮影が行われます。名誉なこととして、紅白の幕を張り巡らして撮影する会社もあるくらいです。

優良申告法人で検索をかけると、ほとんどが表敬を受けた会社の自慢サイトばかりになります。それほど誇らしい表敬というわけです。

優良申告法人を定義すると「申告納税制度の趣旨に即した適正な申告と納税を継続し他の納税者の模範としてふさわしいと認められる法人」ということになります。

・優良申告法人の厳しい条件。

一番難しい条件は、過去3年間の納税額が平均以上ということがあります。要するに利益が出なかったりもうけに波があったりする会社は、そもそも選定の対象外なのです。

優良申告法人を15年継続したとすれば、その間に一定の利益を毎期維持し、納税に貢献していることが必須の条件になります。

その他には、現金残高は合っているか、売上除外はないか、経費は公私混同がなく妥当か、架空の経費を計上していないか、消費税、印紙税など付帯税が正しく計算されているか等が問われます

もちろん各年度の申告漏れにも許容範囲がありますから、よほど精度の高い経理処理をしていないとクリアできません。会社でとっている新聞を自宅に配達させていても公私混同です。もちろん所得税の滞納があれば命取りになります。

申告・納税は税務行政に協力する立場ですから、e-Taxの利用は必須です。

税の啓蒙活動への積極的な取り組みとして、納税協会の役員を引き受け、会合には皆出席であることも優良申告法人の評価ポイントになると言われています。いかにつまらない福祉制度委員会でも、出席しておくことがよろしいわけです。

■恐怖の質問検査権、税務調査で電帳法改正の狙いが明らかに。

◆ 税務調査で優良申告法人が優遇されるわけ。

優良申告法人に選定される会社は、とても少ないので名誉なことだと書きました。

しかし経営者というのは、本音で言えば社会的な名誉よりも利益や節税を好みます。その上で優良申告法人を維持することに腐心する理由は、それだけの経営上の見返りがあるからに他なりません。

平均以上に多く納税してもコーヒー一杯出てくるわけではないし、お中元もお歳暮もこない不毛のコストが税金です。また税務署が仕事を紹介してくれるわけでもありません。

それでも税務署長が来社すれば特別扱いをし、優良申告法人を守っていこうとする裏には、税務調査での配慮への期待があるからなのです。

優良申告法人の税務調査には、一般の調査とは異なり統括官(統括国税調査官)が来ます。調査対象を選定する権限や最終的な判断は、統括官に任せられます。

・優良申告法人では国税OB税理士登場。

調査を受ける方の優良申告法人では、税務調査に備えて別に国税OB税理士をお願いします。OB税理士とは、税務署の元署長さんで定年退職後、税理士を開業されている方です。

■OB税理士から聞いた相続税の税務調査の押さえどころ。

顧問契約している日常の会計処理や決算をまとめる税理士は、税務調査には出てきません(そうでない場合もあります)。以前は元税務署長のOB税理士が、申告書にサインして提出していました。

このクラスの税理士になれば、統括官でも遠慮が出るのか、落としどころを探すようになります。骨太のOB税理士であれば、「もうその辺でやめといたらどうや。」などと言う場面にも出くわしたこともあります。

やはり納税額が多いからこそ、優良申告法人でいられるわけです。また国税局から推薦を受けたOB税理士と契約していると、課税庁にきちんと意見を言うことができます。

それだけに調査する統括官の方も、後々のことを考えて配慮するのではないかと思います。別のOB税理士の話ですと一般の法人であれば、当然に是正する程度の経理ミスについても、優良申告法人の場合は見送ることがあるそうです。やはり統括官の立場では、税務署が選定した優良申告法人を尊重する意識があるのかもしれません。

◆ 優良申告法人の税務調査、まとめ。

優良申告法人制度の指針の見直しが行われて、数年ほど経過しています。そのため前回の調査は個別指導で済んだ優良申告法人でも、次回の調査では実地調査になると思います。ここは未知数の部分があり、実地調査でどこまで踏み込んでくるかという不安が残ります。

昔はおおらかな時代で、税務署の幹部連中にビール券を配ったり、特別なゴルフボールをプレゼントしたりして人間関係を築いていたようなこともありました。税務署の幹部は転勤がありますから、顔ぶれがしょっちゅう変わります。その都度、納税協会の会合やら意見交換会で顔つなぎをして一杯酌み交わしておくことが大事な点でした。

一時期、コロナ禍でそれはできませんでしたが、また復活しています。優良申告法人といえども、税務署長や統括官、総務課長と顔つなぎができていないと、表敬が維持できるかどうか気がかりになります。

優良申告法人の本音を言えば、税務調査で手加減を期待するから税の啓蒙活動への積極的な取り組みや納税協会の役員を引き受けるのです。

もしそのメリットが期待できなくなれば納税協会は、そもそも成り立たないでしょう。またその結果として、税務行政もぎすぎすしたものになると思います。優良申告法人制度は税務署にとっても、優良申告法人にとってもそれなりに意味があると言えるのではないかと思います。

中小企業の経営課題はその日暮らし、体験を側近が語ると泥縄経営。

生命保険会社が残高証明を出せない理由。

本サイトも開設してから15年近くになります。その初期のころの記事に補足が必要になりましたので、もう少し踏み込んだ解説を試みました。

■生命保険の残高証明は出せるわけがない。

生命保険は、預金と違い保険料を預かっているわけではありません。残高があるわけではないので、残高証明は出せません。出せるのは、「既払込保険料証明書」「保険積立金証明書」や「解約返戻金証明書」などになります。わかっているようでわからない、生命保険の残高証明についての補足記事です。

◆ 生命保険会社が出せる証明書は?

法人に関連して、生命保険会社が出せる証明書は「既払込保険料証明書」「保険積立金証明書」や「解約返戻金証明書」などがあります。

定期保険の前払保険料や終身保険などの資産性の高い生命保険の保険料は、保険積立金として経理処理されなければなりません。決算時には、保険積立金の金額を確認するために保険会社に「保険積立金証明書」の発行を依頼することがあります。

「解約返戻金証明書」も保険会社に依頼すれば発行してくれますが、法人の決算では出番がありません。解約返戻金証明書は今解約すればいくら戻ってくるかを証明する書類です。破産して債務整理などをするときには必要になりますが、「保険積立金証明書」と異なり一般的には必要としない書類です。保険積立金と解約返戻金はもともと別のものですから、金額が一致することはありません。

法人契約の生命保険を題材に記事を書いていますから、保険料と解約返戻金の経理処理や期末の決算処理についても関係が出てきます。バレンタインショックの国税庁の通達以来、保険料を全額損金で処理できる保険が大幅に制限されました。

また複雑な保険積立金を求められる保険商品が増えてきました。正しく経理処理ができているか確認するため、保険会社に残高証明書を求めるケースも増えてきたものと思います。

◆ 生命保険会社の残高証明書の誤解。

「“生命保険会社” “残高証明書”」で完全一致検索すればわかりますが、生命保険会社は残高証明書という言葉は使いません。残高という語彙が何を指しているか不明なのです。

生命保険では残高という概念は適切ではなく、保険積立金証明書(保険積立金残高)もしくは解約返戻金証明書(解約返戻金残高)を区別しないと意味が通らないのです。

生命保険会社が発行する保険積立金証明書は、記載された残高があるわけではありません。決算処理で保険積立金残高を証明する資料となります。銀行が発行する残高証明書とは、そもそも意味合いが違います。

サポート窓口に確認しましたが、M生命では残高証明書と言えば、解約返戻金証明書と既払込保険料証明書しか発行できないと回答がありました。保険積立金証明書は、対応していないそうです。本来保険積立金は、契約者側の責任で行うものですから言い分に一理あります。

◆ 保険料は生命保険会社の収益「保険料等収入」。

生命保険会社の収益構造からすれば、保険料等収入とは契約者が支払った保険料を保険会社の売上とみなしているということです。その保険料全額が保険会社の収益です。

保険料は預かると言いますが、預金とは異なり契約応当日に保険料に充当されれば、保険料は保険会社の収益とみなされます。

保険料を収納された時点では預かり金ですが、保険料に充当されれば、預り金ではなくなり保険会社の売上であり収益というわけです。そのため保険会社では「保険料等収入」と言う言葉で売上高を表現しています。

保険会社は保険料を積み立てて運用し、事業継続費用(保険金などの支払、保険事業運営費等)を差し引いたものが基礎利益と呼ばれます。基礎利益は一般企業の営業利益に近いものと考えればわかりやすいと思います。

保険料は預かると言いますが、銀行の預金のように返す必要がない収益とみなされます。保険会社は、保険料を収益として計上し経営を維持しています。

別の見方で、保険料が預り金だとすれば返金できるはずです。しかし取り付け騒ぎがあっても保険料は返せません。そういう意味では、保険会社は最初から破綻していると言えなくもありません。

■保険会社は元から破綻しているが、オドロキの潰れない理由。

ただ保険会社にも理屈があり、収益として受け取った保険料の総額と運用で得た収益が保険金支払総額と事業費総額の合計と釣り合うように、収支相等の原則があります。

支払保険料が保険料に充当された時点で、保険料は預り金ではなく、保険会社の収益となると言いました。それゆえ預かっていないのですから、残高はないことになります。ただ契約で約束した保険金支払いと解約返戻金は保証されるという仕組みになっています。

◆ 生命保険会社の残高証明書、まとめ。

ある会社の総務部長は銀行から来られて、経理を兼務されていました。簿記の資格はお持ちでしたが、決算処理などはよく理解されていませんでした。顧問税理士の指導で、決算書を作成されていました。税理士から保険積立金があるなら、保険会社から残高証明をもらってくださいと指示がありました。

そういうわけで、銀行上がりの総務部長は残高証明が保険積立金明細書であることが理解できていなかったため、銀行の感覚で残高証明を考えてしまったということです。

保険会社が出せるのは払込保険料総額、保険積立金(資産計上額)、解約返戻金などの明細です。決算に必要な書類は保険積立金証明書です。

■生命保険の残高証明は出せるわけがない。

ここにきて国税通達が、生命保険の経理処理をとても複雑な仕組みに変えてしまいました。保険の契約時期により経理処理の違いはよくありますが、同じ保険でも経過年数により経理処理が変遷するというややこしさです。

生命保険は一度契約すれば、毎年同じように保険料支払いが発生して、同じように経理処理をするものと考えていると大きな間違いにつながります。

そういう意味では、生命保険会社も「契約内容のお知らせ」などに経時的な経理処理の案内を行い、定期的に保険積立金明細書を郵送するぐらいの顧客サービスがあってもよさそうなものです。

法人保険の間違いやすい経理処理、注意点まとめ。

国税庁のトドメ通達で節税保険ついに全滅か。

引退できない社長の退職金否認リスク。

社長は引退できないのであれば、引退しないということが正解かもしれません。まだまだ健康で頭もしっかりしていれば家に引っ込んでばかりもいられませんが、かといって毎日ゴルフでは身がもちません。

当初の予定通りに引退すると、体が弱るまでは会社に出向いてあれやこれやと口出しをしてしまいます。

経営というのは指示命令系統が2つあると社員は混乱します。一つの船に船頭は二人要らないのです。

そんなことは十分わかりすぎるぐらいわかっていても黙っていることができない
のは、会社に出てきてあれこれ見聞きするからです。見えなければ、知らなけれ
ば不満も不安も出てきませんから、アドバイスを装った口出し指示も出なくなり
ます。

それがたやすくできないから事業承継は引き際が難しいのです。その結果困り果てるのは顔色をうかがう幹部社員です。しかしそれだけでは済まない大問題が退職金の否認リスクです。

役員退職金を否認されない、あたりまえの極意。

◆ 社長が簡単に引退できない事情。

中小企業の経営者は社長には違いありませんが、それだけでは説明がつかない影
響力を持つとしたものです。形式的には役員退職金を支給すれば退職ですから、
実質的に引退しなければなりません。

しかしカリスマ性が足りない後継者や危機感に欠ける幹部連中を見ると、居ても立ってもいられなくなるという心境になるようです。

退職して経営の一線から退いているにもかかわらず、顧問税理士が経営に口出しし
ないよう意見しようものなら逆鱗に触れてしまうのがオチです。果ては、能力の
ない幹部に任せて会社が左前になったら誰が責任を取るのかときます。

引退した経営者が能力のない幹部と酷評するのは、後継社長が選任した人たちです。引退社長と後継社長の経験値や能力に差があるのは当り前です。それを自分と同じにできないから無能というのはやはりお門違いでしょう。

社長が簡単に引退できないのは、後継者に高望みするからです。後継者は後継者
の経営運で道を切り開くしかないのです。引退できないなら退職金をもらわずに
執念深く経営権を離さないことです。その結果、会社が成長するか衰退するかは
誰にもわかりませんが。

事業承継、アドバイスと口出しの違いがわからない経営者の悲劇。

◆ 引退したつもりの口出し迷惑。

引退した当座の数年間、体力と気力が衰えるまでは黙っていることができないのでたびたび口出ししますが、その間後継社長が耐えきれるかどうかということになりそうです。

よくあるのは後継社長が決定してすすめていることを、横から幹部社員に口出ししてひっくり返してしまいます。

引退社長にすれば指示命令はしていない、アドバイスだと言います。一見まともな話のように思いますが、双方の立場に格差がある場合やカリスマ経営者なら、アドバイスが神の一声となることが理解できません。引退したつもりの口出しがどれほど事業方針に混乱をもたらすか理解できていないのです。

一番困るのは後継社長に直接言わずに、関与している幹部社員に口出しすることで後継社長のやる気がそがれていくことです。

後継社長には言っても聞かないので口出ししないが、幹部社員にはアドバイスと称し横やりの指示命令を出すというのは、まことに困りものです。このパターンが事業承継の障害になる事例をいくつか見てきました。

経営権移譲の難しさ、アドバイスと口出しの違いがわからない経営者。

◆ 聞く耳をもたない社長の末路。

聞く耳をもたずに独善的な判断で破滅に突き進むのは、どこかの国の皇帝とも呼ばれる大統領ではないですが、事業承継に失敗する多くの社長の共通の末路です。

聞く耳をもたない社長の特徴は、あたかも聞く耳をもっているような振りをしてその実は、人の意見など聞きはしないということです。

耳の痛いことを言う幹部を遠ざけるのは、好き嫌い以前の経営者の本能のようなものです。中小企業の経営者はいくら体裁を装っても裸の王様であり、一種のアウトローなのです。

世間ではこういう経営者の傾向をカリスマ性などと持ち上げたりします。社長の末路とは言いましたが、ただ経営には運が伴いますので、社長が聞く耳をもたないから経営に失敗するとばかりは言えないところが運命の不思議です。

役員退職金の功績倍率は課税当局が決める。

◆ 引退できない社長の退職金否認リスクはハンパない。

この件は下記の記事に詳しく書いていますが、ざっくりまとめると引退しきれな
い実権を離せない引退社長の役員退職金は否認されるリスクがあります。

税務調査でも役員退職金を支給したら細かく確認が入り、議事録の提示も求められます。

役員退職金の否認が増えている理由と対応策について。

何と言っても怖いのは退職金否認リスクです。調査官にとっても否認できればで
かい手柄になりますから、引退社長の退任後の経営への関与をあの手この手で調べ
ます。その結果、退職金が否認ということになれば、悪くすれば会社の存亡にかかわる一大事に発展しかねないのです。

退職金を否認されれば、巨額の役員賞与を臨時に支給したことになります。役員賞
与となれば費用にできませんから莫大な法人税が追徴されます。また退職金を受
け取った引退社長にすれば、有利な退職金税制(退職所得控除+1/2課税+分離課
税)が使えないことになりますから、巨額な所得税と不納付加算税、おまけに翌年の住民税は見たことがないような金額になると思います。

役員退職金否認、最新判例。

さらに悪いことがあります。役員退職金を支給するタイミングは、事業承継で自社
株評価を下げたり、不動産を売却したりしたときに出る一時的な利益と相殺するような設計を考えるのが普通です。

株価を下げて後継者に贈与したのにも関わらず、退職金が否認されると損金算入が認められませんから法人の利益は消せません。贈与した株価が下がっていないことになり、その差額は贈与になるという恐ろしい結果が待っているのです。

引退できない社長の退職金否認リスクはハンパないと申し上げるのはそういう意味ですので、最悪の結果を招かないよう素直に引退をおすすめするわけです。

◆引退できない社長リスク、まとめ。

退職金を支給して引退する場合に最も重要な点は、実質的な引退という基準を満たすことです。

後継者が経営の全権を掌握しているかどうか、その点を周囲にヒヤリングしたり事実関係を確認したりして認定します。

役員退職金の否認が増えているということは、過去の記事に書きました。平成23年の通達により取り扱いが厳しくなりこれまでのように安穏とはしていられないということもあります。

■国税庁のサイトより引用
3) 役員の分掌変更等により、例えば、常勤役員が非常勤役員(常時勤務していない者であっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められるものを除く。)になったこと、分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね50%以上減少)したことなどで、その職務の内容又はその地位が激変した者に対し、当該分掌変更等の前における役員であった勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与

とありますが、上記の基準を満たしていても税務署の判断は、実質的にどうなの
かを見てきます。その判定で退職金が否認されれば上記に書いたように、莫大な法
人税、個人では所得税が追徴されます。そのような事態を招かないように自重さ
れることが賢明なわけです。

経営者の運が会社の運命を決め、社員とその家族の運命を左右する。